ブランディング強化のためのディスプレイ広告における vCPM 配信

小林 和弘, 岩野 義史 3月 2018 ディスプレイ

デジタル広告運用プラットフォーム AdWords のディスプレイ広告には、2種類の広告配信方式があります。広告が見られる位置に表示されることを最適化する vCPM ( ビューアブル CPM ) 配信と、クリック最適化の CPC 配信です。


vCPM 配信の目的は、オンラインユーザーに広告を見てもらうことです。Google が以前に実施したディスプレイ広告の調査では、vCPM 配信か CPC 配信かで、ディスプレイ広告が配信される場所は必ずしも同じではなく、従ってリーチできる人も同じではないという結果が得られました。


ではvCPM 配信と CPC 配信とでは、ユーザーがディスプレイ広告に接触したことによる、対象商品やブランドの認知や、購入意向を高める等のブランディング効果に違いはあるのでしょうか。

 

今回の記事では、その調査内容と結果、およびそこから得られたインサイトがデジタルマーケティングに及ぼす意味を考察します。

起点としてのリサーチ課題


「たとえ同じ広告クリエイティブ・配信ターゲット条件であっても、vCPM と CPC 配信では、広告のブランディング効果に違いがあるのではないか」


これが、調査から検証したいリサーチ課題でした。ブランディング効果とは、具体的には広告想起、広告商品やブランドの認知、興味喚起、購入意向への効果を示します。

 

調査方法


Google は、調査会社の調査パネルを使い、以下の手順に従ってランダム化比較試験を実施しました。

  • 調査対象者をランダムに2つのグループに分類
  • 一方のグループには調査対象のディスプレイ広告を配信し、もう一方のグループには調査とは無関係な広告 (ダミー広告) を配信
  • 広告接触期間の後に、調査対象者にアンケート調査を実施して、調査に関連する商品やブランドの認知や興味など、調査 KPI に設定した項目についてヒアリング
  • 調査対象広告に接触したテストグループとダミー広告を比較したコントロールグループで、統計的に有意な差*があるかどうかを確認

調査全体の設計は以下の通りです。

 

調査設計

2つのグループはランダムに分けられています。グループ間の唯一の違いは、調査対象広告が配信され、日常でのウェブページ閲覧時のいずれかのタイミングで広告に接触したかどうかだけです。従って、テストグループにコントロールグループより統計的に有意なアップリフトが見られた場合、広告によって接触者の態度変容が起こった (ブランディング効果が認められた) という因果関係が言えます。


2 つの分析視点


今回の調査では、2 つの視点から分析を行いました。


配信方法:vCPM 配信と CPC 配信では、ブランディング効果は異なるのか
デバイス:モバイルとパソコンでは効果は異なるのか

これら 2つの組み合わせから、以下のようにグループを分け、比較分析を行いました。

 

調査設計2

分析方法


上記のスタディの全体的な傾向を把握するために、カイ二乗検定のメタアナリシス手法の一つであるコクラン-マンテル-ヘンツェル検定 (Cochran-Mantel-Haenstzel Test. 以下 CMH 検定) を用いたメタアナリシスを行ない、vCPM 配信とCPC 配信、そしてモバイルとパソコンとではディスプレイ広告の効果がどのように違うのか総合的に分析しました。

 

ブランディング効果が認められた調査結果


その結果が以下の表です。

 

調査結果

この結果から次のようなポイントが見えてきます。


全体として、ディスプレイ広告によるブランディング効果が確認できた
vCPM は CPC よりもやや効果が高かった
vCPM ではモバイルでパソコンに比べ、より深い指標 (購入意向) まで有意なアップリフトがあった

調査結果から分かること


4つの結果を俯瞰すると、今回の調査で最も効果が見られたのは、モバイルへの vCPM 配信でした。具体的には、広告の閲覧により、広告想起だけではなく広告ブランドの認知も獲得でき、購入意向を醸成させる有意な効果を確認することができました。


なぜ vCPM モバイル配信の効果が高かったのでしょうか。


考えられる要因としては、広告のビューアビリティを最適化したモバイルへの配信は、広告を見てもらいやすいため、より深く広告内容を印象づけることができたのではないかということです。


パソコンに比べ、モバイルのディスプレイ広告は画面に占める広告占有率が高く、かつ vCPM 配信によってより見られやすい場所 (広告枠) に広告が表示されたためだと想定します。

 

vCPM 配信のインプレッション効率を分析


Google のデータから、日本での AdWords ディスプレイ広告配信における vCPM と CPC 配信の単価を確認しました (2017年7-9月) 。単価を比較するため、vCPM と CPC それぞれの 「 ビューアブル インプレッション 」 の1000回当たり単価を示しています。

 

  • vCPM は ビューアブル インプレッション*1 1000回で 26*2
  • CPC は ビューアブル インプレッション*1  1000回で 100*2

費用対効果という観点からビューアブルインプレッション効率を分析すると、vCPM は CPC に比べて 約 74% 低減できるという結果になりました。


*1 CPCは、ビューアブルインプレッションを求めるためにビューアブル率を 42% として算出

*2 CPC の単価を 100 として指数化 

今後のデジタルマーケティングへの示唆


今回のディスプレイ広告のブランディング調査では、CPC 配信とvCPM 配信ともに有効性が認められ、特に vCPM 配信では、モバイルにおいて高い効果が確認できました。上記で分析したように、ビューアブルインプレッション効率のデータからは、vCPM の費用におけるリーチ効率は CPC 配信よりもよいことが分かります。


とはいえ、広告戦略を立案するにあたり、vCPM 配信と CPC 配信のどちらが優れていると一概に判断することはできません。大切なことは、マーケティングコミュニケーションの目的によってそれぞれの持ち味を生かして使い分けるということでしょう。


たとえば、広告クリックからのコンバージョンという、その場における顧客の行動が目的であれば CPC 配信がよいでしょう。一方、必ずしもクリックを優先せず、生活者に届けたいメッセージと広告を目にしてもらうことによるブランド構築を目指すなら、vCPM 配信が選択肢となるはずです。

 

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