日本マクドナルドがデジタルを活かして実現する “FUN PLACE TO GO”

近年、革新的なマーケティングを次々と展開し、業績を伸ばしている日本マクドナルド。今回は、デジタルを活かして実現する “FUN PLACE TO GO” というテーマで、日本マクドナルド マーケティング本部 デジタルエンゲージメント部 上席部長 渡邉 英右 氏から、同社のデジタル戦略について聞きました。(渡邉氏の役職は取材時の 2017 年 11 月現在のもの

1. 13 万人の現場力が支える日本マクドナルド

 

多くの方がマクドナルドというブランド名をご存知でしょう。マクドナルドは、1955 年に米国で 1 号店を開店しました。現在は世界 100 カ国以上で 36,000 店舗を展開しています。

日本では、1971 年に銀座に第 1 号店がオープンしました。2016 年の日本の全店舗売上は約 4,300 億円です。現在の店舗数は約 2,900 店舗、アルバイト総数は約 13 万人、年間のお客様総数は約 13 億人となっています。マクドナルドのビジネスを支えているのは、この全国 2,900 店舗で働く約 13 万人の現場力だといえます。

2. マクドナルドはどのようにデジタルを活用しているか

実はマクドナルドのデジタルには、さまざまなチャネルおよび接点があります。お客様に店舗に来店するまでの認知獲得としては、Owned、Earned、Paid の各メディア、そして今年導入したポイントカードが含まれます。

来店後は、Wifi やデジタルメニューボードなどでお客様の店舗体験を高めるべく努力しています。この店舗体験を支えるのは、設計を行ったマーケティング部門だけではなく、現場を支えるクルーの力も多大です。私たちは、お客様にマクドナルドのお店を “FUN PLACE TO GO” と感じて頂けるよう、全てのチャネルや接点をデザインしています。

なお、マクドナルドにおいては、デジタルはあくまでマーケティングの一手段であり、手段(デジタル)と目的が逆転することはありません。お客様の生活や環境のデジタル化が進んでいるため、当社のマーケティングにおいてもデジタル対応が求められるという認識で取り組んでいます。

デジタル上で提供する店舗情報についてですが、マクドナルドのような実店舗を持つ飲食店や小売企業にとって、商品やサービスの最終購入(コンバージョン)は店舗で発生します。

一方、スマートフォンが浸透した現在、来店前にスマートフォンで店舗情報を検索するケースが増えています。ある調査によれば、50 %のお客様が来店前にスマートフォンで店舗情報をチェックするといいます。そのため、いかに最新の店舗情報を正確にデジタルで提供するかが非常に重要になってきます。

マクドナルドでは、2011 年に店舗情報を Google マイビジネス に手作業で登録していました。このため、更新が最新の情報に追いつかない場合もあり、多くのお客様からお客様相談窓口にご指摘がありました。これでは“FUN PLACE TO GO” を楽しんでいただくことができません。

実店舗を持つビジネスをされている方は、今一度、正しい店舗情報が提供できているかチェックしてはいかがでしょう。マクドナルドは昨年、Google およびパートナーの GOGA と協力し、店舗情報を常に最新に保つ仕組みを構築しました。

3. YouTube 来店コンバージョンで実店舗への来店効果を計測

すでにマクドナルドは、さまざまな形でデジタルを活用した取り組みを行っていますが、重要な一例として 2017 年 8 月に実施した「マック vs マクド」のプロモーションが挙げられます。ここでは、YouTube 動画広告をどう活用し、来店コンバージョンの仕組みを活用してプロモーション結果を分析したか見ていきます。

このプロモーションは、以前から注目を集めていた「マクドナルドはマックと呼ぶべきか、マクドと呼ぶべきか」問題に決着をつけるべく、マクドナルド側から公式にお客様に対決を依頼したものです。マクドナルドによる事前の調査では 11 都道府県しかなかったマクド軍が、結果的には勝利を収め、大きな話題となりました。対戦結果発表後には、マクドナルドの公式サイトが関西弁になり、なかでもサラ・カサノバ社長による関西弁のメッセージは多くのメディアで取り上げられました。

マクドナルドでは、プロモーションを主に以下の 3 期間に区切り、コミュニケーションを計画しています。

  1. プレバズ期間:商品発売までにお客様の期待値を盛り上げる
  2. ローンチ期間:商品発売後に、マクドナルドの店舗に足を運んでもらう
  3. リブースト期間:商品発売後から少し時間が経ったタイミングでさらに盛り上げる

「マック vs マクド」キャンペーンにおけるコミュニケーションとして、ローンチ期間に YouTube 来店コンバージョンを実施しました。動画広告のクリエイティブは、テレビ CM の素材を活用しつつ、YouTube のユーザーにより楽しんでもらい、かつエンゲージしてもらえるよう最適化しました。これを MAD MOVIE と名付けています。

MAD MOVIE 画面

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ローンチ期間に約 40 秒の MAD MOVIEを配信し、3 つのプロモーション期間それぞれで効果を測定して評価しました。

  1. Awareness フェーズ(認知獲得):TrueView 動画広告の視聴率、ブランド認知度
  2. Consideration フェーズ(検討促進):購入意向、検索上昇率
  3. Action フェーズ(来店):店舗来店率

図:結果

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*東京編大阪編合算
**ブランド効果測定
***対象店舗:全国
8 月 9 日 - 15 日の期間に出稿された TrueView 動画広告を選択視聴した人の中で、 8 月 9 日 - 22 日の間に実際に来店した人の割合

測定した視聴率、ブランド認知度、購入意向のすべてで、業界平均および想定値より上昇しました。一方、マクドナルドのような実店舗型のビジネスにとって重要な指標である来店率については、今回可視化できたことそのものが大きなステップであり、今後はこの数字をさらに改善したいと考えています。

このキャンペーンを通して、特にクリエイティブの視点において、以下の 2 つの学びを得ることができました。

  1. プラットフォームごとのクリエイティブの最適化

テレビ CM とは異なる YouTube 向けの動画 MAD MOVIE を配信することで、視聴率、来店率ともに想定よりも高い結果を得ることができた。マスメディアでは実現できない、YouTube ならではの大胆なクリエイティブがお客様の心をつかみ、それをきっかけに多数のお客様の来店につながったことがわかった。

2. クリエイティブの評価手法

これまで動画広告の評価は視聴率を基準としており、「どのくらい視聴されたか」を測定していた。しかし今回実施した YouTube 来店コンバージョンによって、「動画を視聴して、さらにどの程度来店したか」まで測ることが可能になった。これにより、たとえ視聴率が低くても来店率が高かったクリエイティブは、実際のビジネスへの貢献度が高いと評価することが可能になるなど、新たな角度からクリエイティブの効果を測定できるようになった。


マクドナルドでは、さまざまなマーケティングの取り組みがお客様にどのように受け止められているかを理解すべく日々試行しています。今回の来店率計測は、お客様をより深く理解する新たな指標となるものでした。

実店舗を運営している企業はもちろん、その他の業態の企業にも、動画広告の測定、評価方法の一例として、参考になれば幸いです。

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