トライアルとアサヒ飲料 - 共同で流通の課題解決に取り組むために

有本 直史 2019年7月 O2O, 小売, 食品

これからの飲料メーカーに求められることは、自社商品の魅力を最大限伝えることだけではなく、成熟期となった業界全体の課題に応え、業界そのものの質的発展に寄与すべきことであると考えています。小売・流通とメーカーの共同販促を進める上でもそれは変わりません。小売・流通に共通する課題に対して仕組みで解決し、結果的に自社商品の売上につながることが大切です。今回は、IT技術を駆使して店舗展開を行う株式会社トライアルカンパニー様(以下、トライアル)と当社が取り組んだ共同販促の取組みをご紹介します。

データの分析結果から共同販促プロジェクトを展開

トライアルは、衣・食・住の日常的に使うものをワンストップで手頃な価格で提供するスーパーセンターをメイン業態として、九州エリアを中心に全国で 200 店舗以上を展開されています。毎日お客様がご利用するような店舗を目指していましたが、購入頻度が高い生鮮カテゴリーの品質や鮮度の魅力をお客様に十分に伝えきれていないことが、課題でした。また、業界全体としては中長期的に客数の減少が避けられない中で、魅力的な商品提案により買上点数を高める手法の模索も重要な課題でした。

これらの課題に対して、当社とトライアルで分析を進める中で、生鮮食品、特に精肉と炭酸飲料・炭酸水が併買される割合が高いことが分かり、「生鮮(精肉)」 と 「清涼飲料(炭酸飲料・炭酸水)」のデジタル共同販促を実施して、来店促進および売上拡大を図るプロジェクトを展開しました。

店舗群を 3 種に分類し、来店効果を比較

プロジェクトの開始に当たり、まず店舗群を 3 つの実験グループに分類しました。

①店頭と動画広告実施グループ: 店頭での施策として動画サイネージを含む売場を展開し、同時にかつ、商圏内で動画広告の配信を行う店舗
②動画広告のみ実施グループ: 商圏内で動画広告の配信を行う店舗
③コントロールグループ: 店頭施策も動画広告の配信も行わない店舗

動画クリエイティブには、トライアルの商品担当部長自らが、仕入れにこだわった精肉を使ったレシピ動画を制作。そのレシピ紹介後に一緒に飲んだらおいしい炭酸飲料・炭酸水を紹介することでシズル感を演出しました。これを各店舗の 5km 商圏内の主要顧客層である 25 歳から 54 歳の女性に対して配信しました。

動画広告の配信とともに店頭施策も実施する店舗においては、デジタルサイネージを配置し、同じクリエイティブを展開。精肉売場に隣接して炭酸飲料・炭酸水を配置し、お客様が自然に商品に手を伸ばしたくなる売場を整えました。

併売訴求の狙いが的中ー販促施策のインパクト

4 週間にわたるキャンペーン期間中に、広告接触後の来店効果分析を行ったところ、「①店頭と動画広告実施グループ」は、「②動画広告のみ実施グループ」や「③コントロールグループ」より高い来店率を維持できたことがわかりました。

また 3 つの店舗グループ別に売上を比較した場合、「①店頭と動画広告実施グループ」と「②動画広告のみ実施グループ」では、炭酸飲料と精肉の各カテゴリー別売上で前年より高い成長率を示しました。生鮮・飲料全体では、統計モデルに基づく施策を実施しない場合の売上予測値に対し、「①店頭と動画広告実施店」で +5.6%、「②動画広告のみ実施店」で +4.7% となっており、「店頭」と「広告」を同時に展開したほうが、より売上に寄与することを実証しました。

併買率分析からは、今回の共同販促施策により、「精肉」と「炭酸飲料」の併買出現率がキャンペーン実施前の 1.2 倍に増加したこともわかりました。当初の狙いである併買訴求が的中し、「精肉」と「炭酸飲料」の同時購入を促進することができたのです。 

併買ルール上位 1,000 件に占める「精肉」と「炭酸」の併売ルール発生率

asahiinryo

今後の鍵を握るデジタルシフト

今回の取組みでは、POS データの分析から浮かび上がった、併買の可能性が高い商品を組み合わせて店頭と動画広告で共同販促を行うことにより、クロスセルに貢献したことが確認できました。

私たちアサヒ飲料としては、売り切り型のビジネスモデルからデジタルをベースとして顧客接点を作るビジネスモデルへのシフトが不可欠だと考えています。つまり、業界全体の課題を解決するためのキーポイントは「デジタル」といえます。デジタルを起点にして、お客様に対する小売への来店促進や買上点数の向上などに寄与する仕組みが、これまで以上に求められると思います。

今回のキャンペーンでは、店頭の売場展開に加え、デジタルのクリエイティブ制作、さらに動画広告配信まで関係者が足並みを揃えて実施する必要がありました。そのためには、メーカーの営業、小売・流通のバイヤー、店舗オペレーションやラウンダーが、共通の目的に向かって一貫した活動することが重要であることを改めて認識しました。今後もこの学びを活かして、デジタルを活用した施策に磨きをかけながら、小売・流通に共通する課題に応え、業界の発展に寄与していきます。 

メーカーと流通の新たな販促の形: 味の素社の事例より