オンラインからオフラインへー三越伊勢丹の事例から学ぶ O2O 施策の効果と来店データから見るインサイト

浅岡 純子 2016年11月 O2O, 小売

モバイル時代に特徴的な『場所』と『商品・サービス』が結びついた検索行動は、まさに Micro-Moments。そんな生活者の「買い物がしたい」瞬間を捉え、来店への流れを作った三越伊勢丹のキャンペーンから成功の秘訣を探ってみます。

 来店前にモバイルで商品・店舗をリサーチ

 

何かを「買いたい」と思った生活者は、購入の意思決定をする前にオンラインで商品やブランドの情報収集を行うようになりました。結果、目的なく来店をする人は少なくなり、来店人数は減少傾向にあります。しかし、来店した時は購入するとき。来店した人の購入率があがり平均購入単価は増加傾向にあります。

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そして、モバイルの利用が増えると共に、外出先や外出予定先と買いたい商品を合わせた検索が行われるようになりました。これを Local Intent Query(「お出かけクエリ」)と呼びます。地域に関連する検索、具体的には 「エリア名」 と 「商品名 / ブランド名」 さらには、「店舗」 が含まれる検索クエリです。日本国内では、2013 年から 2016 年の 3 年間で 2.5 倍に増加、店舗の集客拡大に繋がる可能性が高いタッチポイントとして注目されています。

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いかに、このような機会を活かし、確実に「買い物がしたい」意図(Micro-Moments)を捉えていくかは、今後の小売りにとって重要な視点です。三越伊勢丹は、いち早くこの視点を取り入れ、デジタル広告を中心とした施策に取組みました。本事例から、デジタル広告を活用して店舗集客につなげる施策のポイントを考えてみましょう。

店舗集客向け販促においてデジタル活用を促進する上での課題

三越伊勢丹では、ダイレクトメールや店頭ディスプレイ、自社サイトや SNS での発信など、主に既存顧客向けのプロモーションに注力していました。しかし、国内需要を喚起し、更なる成長を見込むには、新規顧客を増やすことが求められます。デジタルを活用して幅広いユーザーにリーチし店舗への集客につなげることは、喫緊の課題でした。

店舗販促にデジタルを活用するにはいくつかの課題があります。一つ目、デジタル広告の店舗集客に対する効果が可視化出来ないこと。そして二つ目、店舗販促の担当部門が必ずしもデジタルに精通していないこと。三越伊勢丹でも、EC で取扱のある商品では検索連動型広告を活用していましたが、EC 向けと店舗販促は担当部門も異なるため、EC 部門で得た知見を店舗販促に活かした形でキャンペーンを展開することはできていませんでした。今回、来店コンバージョンが利用可能となったことを機に、店舗販促向けキャンペーンにおいてデジタル広告を中心としたプロモーションを実施しました。

「クリアランスセール」における O2O 施策の展開により来店を促す

2016 年 7 月 13 日から開催した「クリアランスセール」では、店舗集客向けの広告宣伝プランにおいて、デジタル広告を組み込んだ O2O 施策を展開しました。

今回実施した 3 つの施策

1:Micro-Moments をとらえる検索連動型広告:Local Intent Query を中心に設計し、商圏エリア内にいるユーザーの「買い物したい」瞬間を獲得

  • 三越伊勢丹、及び、クリアランスセールにおける Local Intent Query を選定
    • 地域名を含んだキーワード: 例「新宿 百貨店」「新宿 セール」「新宿 ルブタン」など
    • 店舗でのイベント/セール関連キーワード:例「百貨店 セール」「トリーバーチ セール」「伊勢丹セール」など
    • 店舗でのみ取り扱いのあるブランドキーワード:例「ルブタン」「トリーバーチ」「マイケルコース」など
    • 対象店舗の商圏エリア(1 都 3 県+静岡県)へと配信

2: 検索連動型広告の来店効果を可視化:Google の「来店コンバージョン」機能を使い、検索連動型広告の来店効果を可視化。伊勢丹新宿店への「来店人数」及び 1 来店獲得あたりに要した広告費用「来店単価」を KPI と設定し、広告運用を実施

3: ディスプレイ・ロケーションエクステンション(地図表示オプション)の活用:ディスプレイ地図表示オプションを活用し、ディスプレイ広告に Google マップを用いて最寄り店舗の地図を表示。三越伊勢丹の関東地区 9 店舗周辺のユーザーにターゲティング配信

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O2O 施策を実施した結果、検索連動型広告は、従来のメディアに比べ、情報を顧客に届ける (リーチ) コストが 10 分の 1 になることがわかりました。また、広告を受け取った人の 8 人に 1 人 は来店しており (来店率:12.8%)、高い効果を得られることがわかりました。 地図表示をしたディスプレイ広告では、地図表示オプション部分のクリックの割合が、クリック全体の 10% を占め、最寄りの店舗の地図表示が実際の来店を促すきっかけになったと想定できます。

O2O 施策を実施したことからの学び

「来店コンバージョン」機能を通じて取得されたキーワード毎の来店データを詳細に分析することによりわかったデジタル広告の価値及びユーザーに関する新たな知見を見てみましょう。

  • 新規 / 浮動顧客層の獲得における検索連動型広告の有用性を検証
    • 「伊勢丹」等、社名指定以外のキーワードによる来店獲得効果が非常に高い。人々の「買い物したい」瞬間を、検索を通じてきちんと捕捉できたことが伺えます
    • 上記の顧客層は、従来の DM ではリーチすることができていない層です。顧客層拡大という意味において価値が高い施策となりました
  • ユーザーの反応が高いキーワードを分析
    • 「クリアランスセール」というキーワードの検索及び来店は少ない。「クリアランスセール」という言葉の浸透率が低いことがわかりました
    • 価格帯が高い、及び比較検討プロセスが長く、取り扱い店舗が少ない商品ブランドの検索、及びそこからの来店が多い(例、ルブタン、トリーバーチ)。買いたい商品が明確にある場合に、商品の検索から来店に結びつきやすいことがわかります
    • セール期間中は、東京都外からの検索と流入が増加傾向。郊外のユーザーがオンラインで調べた後に来店している行動が明らかになり店舗の商圏が広がっていることがわかりました

生活者のインサイトを見極め、従来のマーケティング方法では捉えることができない生活者の意図をデジタルを活用することで確実に捉えていきましょう。

来店コンバージョンデータから見た O2O の可能性