買いたくなるを引き出すために - パルス消費を捉えるヒント (4)

小林 伸一郎 2019年6月 インタビュー

前回は、6 つの直感センサーの特徴を紹介しました。最終回となる今回は、消費財と耐久財のカテゴリー別に、それぞれの消費行動の特徴を分析していきます。

直感センサーから見る消費財と耐久財の比較

下のチャートは、消費財 (ヘアケア、ソフトドリンク、ビール類、生鮮食品) と耐久財 (洋服、車、生活家電、情報家電) を比較したものです。

6 つの直感センサー 反応のしやすさ

買いたくなるを引き出すために - パルス消費を捉えるヒント

水準の違いはあるものの、おおむね反応順位は似通っているように見えますが、いくつか差異もあります。耐久財では、自分のライフスタイルに合っている商品なのか、今の自分向きの商品なのか、という「フォーミー」が「セーフティ」よりも高くなる傾向です。それに対して、消費財では、より効率的な買い物をしたいという「パワーセーブ」の感度が高まります。

カテゴリー別に見る直感センサーの特徴

ここから、それぞれのカテゴリー別に直感センサーの特徴を読み解いていきます。消費財ではヘアケア、ソフトドリンク、ビール類、生鮮食品を取り上げ、耐久財では洋服、車、生活家電、情報家電を取り上げます。

ヘアケア商品の直感センサー

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ヘアケア: このカテゴリーでは、「セーフティ」と「フォーミー」の高スコアが目立ちます。「コストセーブ」に関しては、他のカテゴリーと比べやや低いことから、お得感よりも、安全性や自分らしさに反応する傾向があることがわかります。知らなかったものに反応する「アドベンチャー」のスコアが低く、「パワーセーブ」が高いことから、一度自分に適した商品だと感じたなら、継続的に使い続ける行動が想定できます。

ビール類・ソフトドリンクの直感センサー

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ビール類: このカテゴリーで目立つ特徴は、「セーフティ」「フォーミー」への反応が低いのに対し、「アドベンチャー」が高い数値を示していることです。このことから、現在販売されている商品の安全性に対する懸念は低く、継続購入よりも、目新しさによるトライアル購入が多く発生していることが見て取れます。

ソフトドリンク: ソフトドリンクに関しては、ビール類と同様、商品の安全性に対する懸念は低く、また特定のブランドに自分らしさを投影する傾向もあまりありません。一方、ビール類ほど「アドベンチャー」のスコアは高くなく、「パワーセーブ」が目立つことから、このカテゴリーでは目新しいものを選ぶ喜びではなく、効率的な購入が求められる傾向があるようです (例: すぐにその場で購入できる商品など)。そして、そこに複数のブランドがあれば、以前購入したもの (=知覚リスクのより低いもの) が瞬間的に選ばれることになります。

生鮮食品の直感センサー

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生鮮食品: 生鮮食品はすべてのカテゴリーの中でもっとも「セーフティ」スコアが高いカテゴリーです。「コストセーブ」に対する感度は中程度であることから、安全かつコスパの良いものを選ぼうとする傾向がわかります。生鮮食品で目立つのは「フォロー」の高さです。これは、多くの人が選んでいるものだから安全だろうという感覚による行動でしょう。テレビの情報番組で紹介された食品がその日に売り切れるという現象は、この直感センサーによるものと考えられます。

洋服の直感センサー

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洋服: 意外なようですが、洋服は 6 つのカテゴリーの中でもっとも「フォロー」スコアが低く、「アドベンチャー」も高くありません。一方、目立っているのは「パワーセーブ」です。このことから、今の時代は、自分に合う服を効率的に、あまりエネルギーを費やさず購入できればいいと感じている人が多数であるとわかります。ファッション雑誌をチェックして、ウインドーショッピングに出かけるという行動は、少数派になってきているのかもしれません。誰かをインスタグラムなどの SNS でフォローする行動も、その人が着ているものなら自分にも合うと信じることができ、自分で考えなくても良い「パワーセーブ」のセンサーに反応しているものでしょう。ファッショナブルでありたいという冒険心や、今の自分とは違う自分に変わりたいという気持ち(=「アドベンチャー」)はそれほど強くないようです。

生活家電・情報家電の直感センサー

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生活家電: このカテゴリーでは「フォーミー」が非常に高く、大きさ、機能、デザインなどの要素が現在の自分の生活に合っているかがもっとも重要であることがわかります。さらに「セーフティ」、つまり安全性についても高い反応を示しています。生活家電は、購入に際して「コストセーブ」に対するセンサーが比較対象のなかでもっとも高い一方、「パワーセーブ」は最も弱くなっています。このことから、まずオンラインとオフライン双方で比較検討を重ねた上で、買うべき商品を見つけ、それを底値で買うという行動がもっとも普及しているカテゴリーの 1 つだとわかります。

情報家電: 生活家電とは対称的に、情報家電カテゴリーでは「コストセーブ」の反応値が低く出ているのが特徴で、現段階ではまだ、高額でも仕方ないと感じていることがうかがえます。また、「パワーセーブ」のセンサー反応値は生活家電に比べてやや高いことから、情報家電を選択することの困難さや面倒を感じていることもわかります。

自家用車の直感センサー

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自家用車: 「セーフティ」が高いスコアを示しているのがこのカテゴリーです。これは、車に対して求めるものが安全性能であることを反映した結果であることは想像に難くありません。一方で「コストセーブ」のスコアが低いことから、「安かろう、悪かろう」という意識がまだ存在しているようです。さらに、「アドベンチャー」のスコアが高く、「パワーセーブ」のスコアは低いことも目立ちます。このことから、現在車はめったに買う機会のない買い物であり、購入しようと検討を開始してからようやく知ることになる多様な情報は、生活者にとって興味深いコンテンツであり、詳しい知識を得るために時間をかけて調べることが当然視されていることがわかります。逆に、購入を考えていない期間には、車に関する情報収集は行われていないようです。

デジタル化による新たな買物行動の高まり

生活がデジタル化されるに従い、いつでも、どこからでも買い物ができる環境になりました。今の時代に起きているリアルな現状を把握するため、日本人はどのような判断基準によって商品を選択しているのかというテーマについて、グーグルはさまざまな角度から観察、調査、分析を進めました。今回の連載では、その全容を 4 回にわたってお伝えしました。

見えてきたのは、今の時代、多くの人は未知の商品を買うことに躊躇せず、何を買うかについては、結果としての買い場に至って決断するという傾向です。買い物の起点はスマートフォン上で発生しており、なおかつ「なんとなく」面白い情報を探すという暇つぶしのような情報検索からスタートするケースが多いこともわかってきました。当初は特定の商品を買うつもりはなく、スマホでさまざまな情報行動を取るうちに、偶然行き当たった情報が刺激となって購買意識が誘発され、その瞬間、直感に訴えかけてきた商品を買うという流れがあるようです。

「探索、ピンとくる (センサーに反応)、買う」という消費行動は、「 Explore - Hit - Action 」という公式に落とし込むことができます。このタイプの行動は、これまで前提とされてきた「知って、調べて、買う ( Aware - Reserach - Action )」とは順序とスピードがまったく異なります。この新たな消費行動を、いかにして自社の商品やサービスのマーケティング戦略に織り込んでいくか。このことが、今後のマーケティング活動における重要な課題として問われています。

買いたくなるを引き出すために - パルス消費を捉えるヒント (1)