真に文化的な多様性のあるマーケティングとは。Google の試みと 4 つの学び

Google のマーケティング責任者の Lorraine Twohill は、同社のクリエイティブが現実を反映していないと気付いたことがきっかけで、多様な世界を包含するマーケティングのためにさまざまな試みを行ってきました。広告におけるダイバーシティの実現は、一企業が解決できる問題ではありませんが、業界全体の意識改善に向けて取り組む Google のアプローチをご紹介します。

本記事は、Adweek に掲載された記事を改稿しました。

世の中の CMO と同じく、私も一日のほとんどの時間をクリエイティブのレビューに費やしています。マーケティングのための洗練された画像を日々大量に目にします。振り返ってみても、そのような画像に登場するのは、都会のファッショナブルな部屋に暮らすおしゃれで完璧な若い人たちばかりでした。すべての人に向けたプロダクトを作っているはずなのに、私たちがクリエイティブを通じて伝えるメッセージは、そのストーリーを反映していなかったのです。

問題は確かに存在しており、何らかの手を打つ必要がありました。そこで、より多面的なマーケティングを実現するための取り組みに着手しました。目指すのは、あらゆる人が自分ごとと感じることができるようなクリエイティブです。このアプローチが完璧だったとは思いませんが、いずれにせよ、この記事では、Google のこれまでの試みについて、困難だった面も含めてお伝えします。

1. チーム メンバーに目を向けよう

まず取り組んだのは、クリエイティブに携わるチームそのものの多様性を高めることです。現段階で、広告業界のなかで黒色人種が占める割合は 6% 未満であり、これは 2010 年以来減少の一途です。この状況を急激に改善することは容易ではありません。多様なバックグラウンドの人材を見つけるのは、時間がかかるからです。急いでポストを埋めようとすると、いつもと変わらない層から採用してしまいがちです。現在私たちは、採用にあたっては必ずさまざまなバックグラウンドを持つ候補者から選ぶようにしています。 

これは自社のチームだけでなく、提携する代理店についても同様です。たとえば代理店とのミーティングでは、自分以外は全員男性というケースがしばしばでした。これに対し、Google は企業として「なぜそうなのか?」、「これに対してできることは何なのか?」と自問するようになりました。このように問い続けることは私たちの責任とも言えます。

ダイバーシティ (多様性) とは、ジェンダーや肌の色を超えた概念です。年齢、地域、社会経済的な多様性、適した職業、能力、性的指向など、さまざまな要素が関わるテーマです。

チームの多様性を実現すると、成果も大きく変わります。新商品のコンセプトについて話し合っていたミーティングで、ある代理店担当者が、それまで誰も思いつかなかったヒスパニックのユーザーに向けた機能について述べました。彼がラテン系だったので、他の参加者とは異なる視点から見ることができたのです。これは貴重な意見でした。

次世代のクリエイティブを模索していくことも重要です。そのために準備しているのが、今年のカンヌ ライオンズでローンチ予定の Google Creative Campus プログラムです。マイノリティ出身の学生をカンヌとカリフォルニア州マウンテンビューに招き、トレーニングやメンターからアドバイスを受けてもらうおうと、Livity UK やアメリカの Marcus Graham Project といった組織と調整中です。

2. ダイバーシティの実現は容易なものではない

ダイバーシティ (多様性) とは、ジェンダーや肌の色を超えた概念です。年齢、地域、社会経済的な多様性、適した職業、能力、性的指向など、さまざまな要素が関わるテーマです。これまで Google がマーケティングで使ってきた画像は、人種的な多様性を持つものではありましたが、いずれも IT 関連で働く洗練された都会人ばかりだったのです。

この状況を改善するため、半日のトレーニング コースを立ち上げました。そのコースで、オーディエンス リサーチの対象にマイノリティの集団を含める方法や、ターゲット オーディエンスを定義するにあたり、インクルージョン(多種多様な価値観を持つ個人の経験、スキルを活かす)という概念を取り入れる方法などについて、詳細なガイダンスやツールを提供したのです。このトレーニングは、すでにチームの 90% と主要代理店パートナー 200 名が修了しており、今後は e ラーニングのコースも立ち上げる予定です。

またクリエイティブの制作にあたっては、現実とかけ離れたイメージではなく、実際に私たちが生きている世界を反映するようにしています。今年ソーシャルおよびデジタルで展開した、Pixel 2 スマートフォンのキャンペーン「#QuestionYourLens」もその一例です。Google がラッパーの Logic とともにグラミー賞で行ったパフォーマンスでは、写真映えする「パーフェクト」な日常の裏で、困難を乗り越えて生きてきた人々のリアルな姿にスポットを当てました。

3. キッチンはお母さんの場所?

共感できるストーリーを伝えるには、ターゲットとなる人々への深い理解と思いやりが欠かせません。相手に対する理解の欠如を示したいなら、ステレオタイプな表現を採用すればいいでしょう。広告に登場する人物のうち、女性はわずか 37% です。しかも、そのほとんどがステレオタイプな役割を演じているのです。ある調査によれば、女性の 85% が広告は現実の自分を正しく反映していないと考えています。

こんなことがありました。先日新しいキャンペーン企画をレビューした際、父親がキッチンで料理するシーンがありました。従来の固定概念から開放された優れた企画だといえます。ところが、その理由が「お母さんが出産で入院中」ということが次のシーンで判明しました。残念ながら、これではやり直しです。そこで、母親が出張中という設定に変更しました。

相手に対する理解の欠如を示したいなら、ステレオタイプな表現を採用すればいいでしょう。

問題はキャスティングだけではありません。クリエイティブを構成するあらゆる要素も検討する必要があります。登場人物のリアリティも大切ですが、音楽、家族関係、食事、服装、商品の描写なども、同様に重要です。昨年展開した Chromebook のキャンペーンでは、ヒスパニックの生活者とじっくり対話しました。その結果、Lo Tuyo es Chromebook は、これまでになくオーディエンスの心に響くキャンペーンとなりました。

この取り組みを効果的に進めるため、マイノリティ出身の Google 社員 40 名がメンバーとなるアドバイザリー ボードを立ち上げました。

私たちは、Google のクリエイティブだけではなく、他社のストーリーづくりにも協力しています。その取り組みの一環として、Bryan Stevenson 氏の Equal Justice Initiative と協力して Lynching in America プロジェクトを作り上げたり、Pride 団体とともに世界 25 か所の Pride パレードの VR ツアーを制作し、当日参加できなかった人に提供したりしています。

4. 状況を分析し、数値化する

真に文化的多様性を持つマーケティングを実現するには、それがどの程度進んだのかを測定し、記録するツールやプロセスが求められます。

これまでも Google は、Geena Davis Institute および USC と提携し、機械学習を使って動画の登場人物を分析していましたが、現在は同様のテクノロジーを自社のクリエイティブにも採用しています。初期調査の結果は驚くべきものでした。性別に関しては、54% の画像が男性を中心としたものでした。これは危惧していたほど偏ったものではなかったのですが、他のカテゴリではもう少し悪い結果が待っていました。手動の分析では、登場人物の平均年齢は 26 歳程度でした。これは国の平均である 38 歳を下回っています。また黒色人種やヒスパニックを中心にしたウェブの画像は、全体のわずか 10% でした。このデータをベンチマークに、明確かつ定量的に目標を達成したいと考えます。

広告におけるダイバーシティの実現は、まだ遠い目標かもしれませんが、今回ご紹介した試みが、真に文化的な多様性のあるマーケティングとは何かということを考えるきっかけとなれば幸いです。その実現に向けて、これからも対話を続けていくつもりです。 

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