ファン拡大や収益化、新たな文化に影響も──YOSHIKI、サンライズ、パシフィックリーグマーケティングが YouTube を使う理由

中村 全信 / 2020年2月 / ビデオ

Google は、2019 年 11 月に開催したイベント「Brandcast」で、YouTube の最新利用実態に加え、企業、アーティスト、クリエイターなどによる活用事例を紹介しました。今回はその中から、YOSHIKI 氏と kemio 氏によるアーティストとクリエイター目線での活用法を紹介。また『機動戦士ガンダム』シリーズを手掛ける株式会社サンライズとプロ野球の「パーソル パ・リーグTV」を運営するパシフィックリーグマーケティング(PLM)株式会社による、マーケターとは異なる角度からの活用法も紹介します。

YOSHIKI 氏「僕がなぜ音楽をやっているのか、YouTube で知ってほしい」

世界中で活躍するアーティストの YOSHIKI 氏は、自身や「X JAPAN」の公式チャンネルで、ライブ動画やミュージックビデオなどの配信に加え、「コミュニティ」タブを使って近況報告するなど、ファンとのコミュニケーションの場としても YouTube を活用しています。YOSHIKI 氏は YouTube に対して、全世界を対象に配信できること、ファンと直接やり取りできる「インタラクティブ性」などに、とくに魅力を感じていると言います。

YOSHIKI 氏は現在、米ロサンゼルスに在住しながら、数多くの国と地域で活動しています。 Brandcast にも過密スケジュールの中、英ロンドンから駆けつけてくれました。なんと運悪く航空券のトラブルがあり、間に合わない可能性もあったそうです。

過去にもさまざまなトラブルに遭遇し、物事が順調に進まないことがあったという YOSHIKI 氏。そんな YOSHIKI 氏の活動に 3 年以上密着したドキュメンタリー「YOSHIKI -Life of a Japanese Rock Star-」は、2020 年に「YouTube Originals」で配信が始まる予定です。困難に直面した YOSHIKI 氏のさまざまな姿を見られることでしょう。

アーティストとして活動する YOSHIKI 氏はテレビのバラエティー番組にも出演します。ところが「(テレビでは)例えば作曲の姿など、僕の本質的なところを見せたいのですが、その前にちょっと破天荒的なところが目立ってしまう」と困惑気味。一方、YouTube ではこのドキュメンタリーシリーズだけでなく、自身の本当の気持ちや舞台裏の姿などを今後も届けていきたいと言います。

「僕がなぜ音楽をやっているのか、なぜ音楽を続けているのか。僕はなぜまだ生きているのか、生きていられるのか。そういう深いところまで YouTube の動画を通じて皆さんに知ってもらえれば。そして皆さんの人生に対して、少しでも何かの刺激を与えられればと思っています」

「“デジタル遺書”がコンセプト」—— kemio 氏

162 万を超えるチャンネル登録者数(登壇時)を誇る YouTube クリエイターの kemio 氏。チャンネルのコンセプトは「デジタル遺書」だそうで、「私が死んでも、誰かが『私こうやって生きてた』っていうのをみてもらえる感覚」で動画を公開していると話します。いわゆる「vlog」(ビデオブログ)として、日々の出来事や感じたことなどをファンと共有するスタイルはシンプルですが、こだわりがあります。

テンポのよい語り口と独自の言い回しが人気の秘密。「テロップをつけるなどの特殊な編集はせずに、言葉でバーッと喋るようにしています。『見るラジオ』みたいな感じ」

企業とのタイアップ案件にもこだわりがあります。「100% 好きになった商品だけをシェアできたらと思っています」と、実際に商品を使ってみて、自分がオーディエンスに紹介したいと思う案件だけを受けているとのこと。こうしたこだわりが、視聴者からの信頼につながっているのかもしれません。

「ガンダム」の新しいファンの獲得には欠かせない——サンライズ

サンライズは、2019 年に 40 周年を迎えた『機動戦士ガンダム』シリーズの作品を配信するYouTube に「ガンダムチャンネル」を開設しました。新しいメディアとして、過去の作品はもちろん、新作『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』を先行配信するといった試みも行っています。

同社の浅沼誠社長は、通信環境も含めたユーザーの視聴環境やニーズなど、ガンダムを取り巻く環境が大きく変化する中、コンテンツをファンに直接届けられる場として、YouTube を開始したと言います。

YouTube で配信した、テレビや劇場版など合計 60 以上に及ぶ過去のガンダムシリーズ作品の中で『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』の同時視聴者数が 10 万人を超え、チャットも盛り上がったことを、最近の事例として挙げています。さらに、前述した新作の先行配信など、YouTube チャンネルでガンダムシリーズのファン層が拡大しています。

2020 年夏に横浜で公開予定の、実物大の動くガンダムを製作するプロジェクト「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」のメイキング動画なども配信されていて、その舞台裏を YouTube で見ることができます。

また YouTube は、ファンの声を確認する場としても活用されています。浅沼氏は「ファンの意見が大事なので、ガンダムチャンネルをこうしてほしい、こういうことをやってほしいなどがあれば、ぜひお寄せください。我々はそうした意見を全部見ています」と述べ、YouTube で寄せられるファンの意見のすべてに目を通していることを明かしました。

パ・リーグTV は YouTube の活用で収益化が改善——1 球場あたりの来場者数、テレビ局からの動画購入が増加

プロ野球のパシフィック・リーグの試合をライブ配信するサービス「パ・リーグTV」を運営する PLM は、球団を超えてリーグ全体でファンの獲得と収益化に取り組んでいます。YouTube の取り組みは 2016 年から。パ・リーグTV をプロモーションするために、YouTube チャンネル「PacificLeague TV」を 2016 年に開設しています。

PLM の園部健二氏(事業開発本部本部長キャリアアドバイザー)によると、「PacificLeague TV」が始まった当初、試合のダイジェスト動画やヒーローインタビュー動画を配信するなど、無難な使い方しかしていなかったそうです。しかし珍プレー集などのおもしろ動画を制作し配信したところおおむね好評で、園部氏は「これはイケる!」と感じたとのこと。

そこで 2019 年に珍プレー集などを強化した結果、総視聴回数が前年比で 8 倍、チャンネル登録者数が 1.5 倍になりました。また野球に興味が無かった人からも「かわいい」「おもしろい」といったコメントも集まってきて、ファンの新規獲得につながったようです。

視聴回数に比例して、広告収益が上がったことはもちろん、間接的な収益向上にもつながったとのこと。「YouTube での視聴回数が指標となって、テレビ局やウェブメディアによるパ・リーグTV の動画購入事例が増えました」と、YouTube 動画の視聴回数の指標としての価値に高まりを感じたとのことです。

また、2019 年のパ・リーグ 1 球場あたりの来場者数は前年から約 1000 人伸びており、これも YouTube を活用した成果の 1 つだと話します。

ファン獲得のためにも収益化のためにも、YouTube の存在は大きく、今後も積極活用していく方針を示しています。

こちらの記事では、ソフトバンク株式会社とサントリーコミュニケーションズ株式会社によるマーケティング活用の事例も紹介しているので、合わせて参考にしてください。

あのマーケターは公私にわたって YouTube をこう使う──吉野家 伊東氏、ユニ・チャーム 森田氏編:私にとっての YouTube