YouTube 動画広告クリエイティブの科学 -- データ分析から見る効果的なクリエイティブ

トラン チー, 大塚 武, 麦島 修, 吉野 祐輝 2018年6月 ビデオ

YouTube 動画キャンペーンのパフォーマンスに影響を与える要因として、投下量、競合ブランドの出稿状況、季節性などが想定できますが、ある調査によれば、最も多大な影響を与えるとされるのはクリエイティブです*1。
従来、動画クリエイティブのように感性が問われるアートのジャンルにおいては、感覚的、そして定性的な評価が一般的でした。Google は、このようにアート的な側面も持ち合わせる動画クリエイティブに対してデータ分析を行い、「 YouTube 動画キャンペーンを成功に導くクリエイティブ制作」に役立てる方法を探りました。本稿では、以下の 3 つのステップで考察します。

1.分析手法について

2.分析結果

3.分析結果を活かすには

 

1.分析手法について

まず YouTube 動画広告の制作経験があるクリエイターや Google の専門チームと意見交換しながら、動画広告クリエイティブを構成する要素を 114 項目洗い出しました(図1参照)。その後、TrueView インストリーム広告とバンパー広告を含む約 2,300 のブランド効果測定結果を対象に、それぞれの動画に対して各構成要素が含まれているかを確認、パフォーマンス(=ブランド効果測定結果)に寄与する要素について統計的に解析しました。

図1:クリエイティブの構成要素の例

図1:クリエイティブの構成要素の例

2.分析結果

パフォーマンスに寄与するクリエイティブ要素は、動画フォーマット(バンパー広告、TrueView インストリーム広告)や、対象となるブランド KPI (広告想起、ブランド認知、比較検討、好意度、購入意向など)で異なることが判明しました。なかでも、特に際立った傾向やポイントは以下になります。 

バンパー広告の場合、6 秒という短い時間の中で成果を上げるために、「〇〇〇するなら/ といえば、△△△(ブランド名)」というように、最も伝えたい1つのメッセージに絞り込んだ訴求が効果的です。また感覚に訴えかけて印象を強める手法として、赤や青などの鮮やかな色彩を用いたり、音声プラス文字(特にブランド認知を狙う場合)による表現なども効果的です(詳細は図 2 参照)。

図2:バンパー広告の分析結果(要約)

図2:バンパー広告の分析結果(要約)

TrueView インストリーム広告の場合、「視聴者は 5 秒経過後に広告をスキップできる」というフォーマット特性を意識する必要があります。冒頭 5 秒間で視聴者のアテンションを自然に捉えるには、例えばブランド認知を狙う場合、視聴者にスキップしないようダイレクトに呼びかけるよりも、「5 秒後に〇〇〇」といった予告やカウントダウンなどによる自然なスキップ防止策がより効果的です。また、比較検討より下位の KPI を狙う際は、クイズなどを用いた問題提起が役立ちます。

なお、感動を誘う演出や意外性を突いたトリビアを盛り込んだ動画は、映像作品として評価され拡散(バズ)することもありますが、ブランド KPI に対してネガティブな影響を与えかねません。コンテンツの存在感にブランドメッセージが負けないためには、ブランドのロゴやパッケージを KPI に応じて効果的に表示したり、視聴者が感情移入できるようなストーリー設計を心掛けるべきでしょう。 

また、バンパー広告とも共通しますが、画面右側にブランドロゴやパッケージを配置すると、PC で視聴する場合、「スキップボタン」や「関連動画」に紛れかねません。これを防ぐには、画面の中央から左側に表示するのが効果的です(詳細は図 3を参照)。

図3:TrueViewインストリーム広告の分析結果(要約)

TrueViewインストリーム広告の分析結果(要約)

なお、TrueView 広告において、「YouTube オリジナルの動画広告」を制作する割合はまだ低く、動画広告の過半数を占める広告クリエイティブが「TVCM からの転用」、もしくは「TVCM に若干の編集・加工をした動画」であるというのが実情です。これらのパフォーマンスを比較してみると、TVCM と同じ内容よりも、TVCM を編集した動画広告やオリジナル広告が高い効果を示す可能性を示唆しています(図 4 の赤丸部分)。しかし、逆に効果を損ねてしまうケースもあるようです(図4 の黒丸部分)。狙った成果を達成するには、より緻密なプランが求められます。

図4:動画の出自別のパフォーマンス比較

図4:動画の出自別のパフォーマンス比較

3.分析結果を活かすには

約 2,300 のブランド効果測定結果から導き出された上記のインサイトは、あくまでも全体を俯瞰した分析であり、個々のケースごとに性別や年代による傾向差を考慮すべきです。また、業種やブランドの差異を超越した「絶対的な法則」を示しているわけではありません。


最終的には、クリエイティブに織り込むべき要素については、各ブランドがそれぞれのアセットや強み、コンテクストなどを踏まえ、PDCA サイクル(企画・制作・配信・最適化)を回しつつ判断すべきです。その際、データに基づくクリエイティブ要素の「観点」や「インサイト」を念頭に置くことで、より高い効果が期待できる可能性があります。

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