コンバージョンを促す動画広告に必要な「ABCD フレームワーク」で TrueView アクション広告を分析する

麦島 修 / 2020年3月 / ビデオ

TrueView アクションは、コンバージョン向けの YouTube 広告です。リーチや視聴を重視していた従来の YouTube 広告とは異なり、視聴者に次の行動を提示するフレーズや見出し、終了画面、サイトリンクなどを動画本体とは別に用意することで、購入や申し込みを促します。

TrueView アクションは、2018 年 4 月の正式ローンチ以降、さまざまな規模の業種で成果を上げてきました。

Google では各年で話題になった YouTube 広告を、国内における動画の人気(自然に発生した再生回数)とプロモーション(広告から発生した再生回数)を考慮して「YouTube Ads Leaderboard」として選定、紹介してきました。今回、TrueView アクションの拡大に伴い、「Japan YouTube Ads Leaderboard 2019 年: TrueView アクション広告(*1)」を発表することになりました。

ここでは、この発表に含まれた動画を Google 独自の動画広告分析(TrueView アクション向けに後述の ABCD フレームワークを使用した分析)をもとに考察します。

ABCD フレームワークで、2019 年の TrueView アクション広告を分析

「ABCD フレームワーク」は、効果的な広告クリエイティブに求められる要素をまとめたものです。

たとえば、視聴者の関心を引くためには「早い段階でピークがあるストーリー構成」が重要です。また「YouTube の動画の 95% は、音声をオンにした状態で再生されている」(*2)ため、音声を有効活用すること、さらには「YouTube のグローバルにおける総再生時間の 70% がモバイル デバイスで行われている」(*3)ことから、「明るくしてコントラストを強めにする」「人物の顔や重要なポイントにズームアップする」「大きなテキストで 1 つのメッセージを字幕で表示」「素早いカット割りとペーシング」など、モバイル向けに配慮することが求められています。

そして Google では次の 4 つの要素に留意してクリエイティブを作ることを推奨しています。

Attract:視聴者の関心を引き込む

(1)構図:商品か人物かにかかわらず、被写体をアップで使用する。

(2)ペース:冒頭 5 秒間に 2 つ以上のショットを入れる。

(3)人物:人物を登場させる場合は、その人物を映した場面から始める。また可能であれば、その人物から直接視聴者に語りかける。

Brand:視聴者にブランドを認知してもらう

(1)紹介:冒頭 5 秒間で商品やブランドを紹介することで、すべてのブランド指標とプラスに相関。

(2)強調:ロゴの表示は重要。どのような表示方法が効果的かは、マーケティング目標によって異なる。

(3)位置:ロゴの表示位置は中央から左。YouTube のインターフェースを考慮すると、この位置が目線を誘導しやすく、ブランドを訴求できる。

Connect:ブランドストーリーと視聴者の感情を結びつける

(1)惹きつける:ブランドに合った、(アクション、ユーモア、好奇心などの)感情に訴える手法を活用する。

(2)関連付ける:人物をストーリーの中心に据える。広告の冒頭に人物を登場させると、視聴者を引き込むことができ、感情的なつながりを築ける。

Direct:ブランドが望むアクションを視聴者に対して明確に提示する

(1)提示する:テキストカード、シンプルなアニメーション、ナレーションなどを使って、オファーや行動を促すフレーズを提示。

(2)動機付ける:「期間限定」「数量限定」「無料モニター」など、切迫感やお得感を与えるオファーを行う。

(3)行動を促す:具体的な「行動を促すフレーズ」(「ウェブにアクセス」「お申し込み」「今すぐ購入」など)を使用したり、検索バーを追加したりして、行動を起こさせる。

これがいわゆる 4 つの「ABCD」です。では、具体的にこれら ABCD をうまく使った動画を紹介します。

ABCD の要素を押さえた動画 3 選

まず、総合的に「ABCD フレームワーク」の要素を押さえた動画の 3 つを紹介します。

サントリーウエルネス「サントリーウエルネス<リフタージュ>「おぐねぇーからのエール」60秒篇 」

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ABCD のすべての要素をバランスよく押さえています。モバイル視聴を前提とした縦型動画に 16:9 の素材を流用しつつも、余白スペースに行動を喚起するオファーを常時表示するなど、視聴者に明確なアクションを促しています。

視聴者のペルソナが明確で、動画クリエイティブ内にブランドの顧客像に合う人物を主役にしたストーリー展開により、視聴者との感情的なつながりを構築。「何歳に見える?」と視聴者に問いかけることで、ごく自然に後半まで動画を視聴させるといった仕掛けも巧妙です。またブランドの提示、オファーへの流れも自然で、動画終了後に数秒の余白を設けており、それが視聴者が実際に行動に移るまでの猶予になっています。

Indeed「Indeed(インディード)があるじゃない!人事担当篇 30秒ver」

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冒頭からブランドが登場し、その直後に間髪を容れずユーモアあふれたストーリーに移行しています。職場での「あるある」が題材となっているため、視聴者との感情的な結びつきも深まりやすい内容です。

エンゲージメントが高い状態のまま自然にオファーを提示していますが、しっかりと視覚、聴覚の両側面で訴求しているため、ブランドが「何を解決してくれるのか」が明確に伝わってきます。

NTTドコモ「ギガホ・ギガライト 料金シミュレーション訴求篇」

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15 秒の短尺にもかかわらず「Call to Action」(行動喚起の導線)が極めて明確です。視聴者に対して目線を外さず語りかけることで、ドラマ的なストーリーがないダイレクトオファーでも、エンゲージメントが構築できています。TrueView アクションの仕様を熟知した上で、行動を促す仕掛け(「詳しくはここをタッチだかんな」)も施されています。

また、ビビッドカラーの配色は、日本独自調査で視聴者に広告を強く印象づけ、ブランドリフトを促す効果があることがわかっており、視覚的にもインパクトが強いクリエイティブとなっています。

比較的多くの広告が心がけていた、視聴者の関心を引き込む仕掛け「Attract」

続いて、ABCD の各要素を見ていきましょう。

Attract で紹介したポイントの 1 つ「(1)構図」を押さえたクリエイティブは、比較的多く見受けられました。これはモバイルでの視聴を前提とした際に、視聴者にとって何が描かれているのかを認識しやすくするために極めて重要なポイント。このポイントを押さえていたのはブランディアの動画です。

ブランディア「弁論編」

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タレントのアップからスタートすることで、モバイルでの視聴でも視聴者を惹きつけられる。

また、先に取り上げたIndeed「Indeed(インディード)があるじゃない!人事担当篇 30秒ver」もこの要素を満たしています。

「(2)ペース」を使った動画も、比較的多く見られました。なお、日本独自の調査でも、「冒頭 5 秒に惹きつける内容」を入れて、「開始直後にストーリーのピークを作る」ことで視聴者を惹き込むことが、ブランドリフトを起こすためには重要だと明らかになっています。ペースが遅いと、視聴者はすぐにその場から立ち去ってしまうことを念頭に置く必要があるでしょう。

楽天市場「【楽天スーパーSALE】2019年秋 YouTube ライト篇」

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開始 3 秒で、「楽天スーパーSALE」、増税前の「購入者数No.1」の文字が連続してアップで流れる。

さらに「(3)人物」のポイントも、比較的多くのクリエイティブで押さえられていました。構図とも関係性が深く、モバイルに合ったアップショットの人物を登場させることで、より視聴者を惹きつけることができています。

例えば NTTドコモ「ギガホ・ギガライト 料金シミュレーション訴求篇」では、登場人物による視聴者への語りかけから動画がスタートしています。

意外に少なかったブランド価値の訴求に重要な「Brand」

Brand で紹介した「(1)紹介」「(3)位置」のポイントを押さえているクリエイティブは、全体的には少ないことがわかりました。

冒頭や最後にブランドを紹介するケースはあったものの、常時ブランドロゴを表示したり、ブランドについて複数回にわたって視覚的あるいは聴覚的に提示したりしたクリエイティブは多くありませんでした。これらのポイントは、広告をスキップできるようになるまでの 5 秒間に表示すること、あるいは YouTube のインターフェースを考慮すると、視聴者にブランドを覚えてもらう上で非常に重要です。

サントリーウエルネス「サントリーウエルネス<リフタージュ>「おぐねぇーからのエール」60秒篇 」は 1 分を超える動画のため、全編通して上下にブランドロゴや商品を配置。ブランドの認知と行動喚起を同時に訴求しています。

Indeed「Indeed(インディード)があるじゃない!人事担当篇 30秒ver」では、複数回にわたって画面にブランドロゴを配置したり読み上げたりすることで、視覚的にも聴覚的にもブランドを覚えてもらう工夫を施していました。

自分事にできる「感情」と「ストーリー」の「Connect」

Connect で紹介した「(1)惹きつける」「(2)関連付ける」のポイントは、多くの動画がしっかり押さえられていました。

また日本独自の調査で、「サウンドなども使いながら、感情を動かす」「連想される音・人・キャラやターゲットとなるペルソナの登場」が重要なことも明らかになっています。視聴者にとって、訴求内容が自分に関係のある内容だと明確になったとき、感情的なつながりを築くことができ、その後の行動にも大きく影響するため、極めて重要といえるでしょう。

ブランディア「弁論編」では、ペルソナとなる人物を起用し、訴求内容が自分に関係のある内容であることを明確にしています。

そのほか、サントリーウエルネス「サントリーウエルネス<リフタージュ>「おぐねぇーからのエール」60秒篇 」は冒頭で「おばさんなんて言っちゃダメ」と呼びかけることで、視聴者との感情的なつながりを築くことに成功しています。

もっとも少ない要素だった、視聴者に望むアクションを明示する「Direct」

Direct で紹介した「(1)提示する」「(2)動機を付ける」「(3)行動させる」は、今回見た動画の中でもっとも少ない要素でした。

せっかく視聴者との感情的なつながりを築いても、そのブランドがもつ便益やオファーが伝わらなければ、行動にはつながらず、大きな機会損失につながります。

人々はいまや大量の情報に同時並行的に接触しており、感情が高まった瞬間に行動につなげられなければ、ブランドは顧客獲得のチャンスをみすみす逃してしまいます。Google では近年、こうした瞬間的な購買動機の発生と行動について、パルス型の消費行動「バタフライ・サーキット」と名付けた情報探索行動として注目しています。

視聴者の感情的な変化に鑑みながら、最適なタイミングで行動を促すオファーを視覚的あるいは聴覚的に提示すれば、刹那的になりつつある視聴者の「Want-to-do(やりたい、したい)」の瞬間を捉えることが可能になります。

サントリーウエルネス「サントリーウエルネス<リフタージュ>「おぐねぇーからのエール」60秒篇 」では、動画中盤で商品の便益を訴求するとともに、「通販限定」「半額」などお得感を与えることで、視聴者へ購入を促しています。

今回の分析を終えて、対象とした動画広告の全体観として、 ABCD における Brand や Direct といった「行動喚起」の要素はまだ少ないことがわかりました。これは、TrueView アクションにはパフォーマンスを改善できる余地がまだ多く残されていることを意味しています。こちらの「Japan YouTube Ads Leaderboard 2019 年: TrueView アクション広告」では模範となる 10 の動画を紹介しているので参考にしてください。

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※掲載している動画は、非公開になることがあります。

Japan YouTube Ads Leaderboard 2019 年: TrueView アクション広告