Think with Google では、デジタルマーケティングに活かせる生活者や市場の動向を継続的に分析し、記事化しています。2024 年も例年に続き、独自の分析記事や市場動向の解説、Google のツールを使ったマーケティングの実例などに、多くの関心が集まりました。
2024 年に 読者のエンゲージメント率(*1)が高かった記事 5 本を紹介します。
1:検索クエリに変化 —— 以前は抽象的だったものでも、今やより具体的に
過去数年で、人々の検索行動がどのように変化しているのかを分析した記事です。
膨大なデジタル情報の中から自分が探している情報を得るために、人々はより具体的で詳細な表現で検索をするようになっています。
検索クエリは、「トピック」そのものと、それを補足説明する「修飾語」という 2 つの要素で構成されます。たとえば、「サステナビリティ」のような新しい概念や時事問題に遭遇した際、人々はまずトピックそのものを理解するための検索を行い、理解が深まるにつれて、より具体的な修飾語を追加していきます。
特定のトピックや商品カテゴリの検索量だけを見ていると、目立った変化がなく、新たな需要がないように見えることもあります。しかし、この修飾語の変化を追うことで、企業は、生活者が今考えていることについて微妙な変化を察知できるのです。
このように、人々の検索動向は、今何が起きているかを示す貴重なバロメーターです。経済の不確実性が高まり、もはや過去のデータや予測だけには頼れなくなっている今こそ、検索動向から早期に生活者の隠れたニーズを発見する重要性が高まっています。
本記事は ヨーロッパ、中東、アフリカ(EMEA) 版 Think with Google の記事を翻訳、編集したものです。
2:京都・亀岡市の花火大会、なぜ全席有料化? データ分析に基づいたプロモーション戦略で安全な開催へ
この記事では、京都・亀岡市で開催した「保津川市民花火大会」のプロモーション戦略を解説しています。亀岡市による部署を超えたデータ分析とゴール設定が、成功の鍵になりました。
同花火大会は、2022 年の開催時に交通機関の乱れにより安全面での課題が浮上しました。2023 年はさらなる人流増加が予測できたため、全席有料チケット制を導入。人流をコントロールするとともに、チケット売り上げを警備費用に当てることで、安全性を確保しようとしました。
全席を有料チケット制にしたことで、チケットの販売数は前年の 3 倍以上に増加。これを完売させるためにデジタル広告の活用を決めましたが、過去に配信実績がなかったことから、成果につながる予算配分を決めかねていました。
そこで、Google 広告担当者のアドバイスを受けて導入したのが、P-MAX キャンペーンです。P-MAX キャンペーンを使うと、Google AI によって複数の配信面を横断して予算配分やクリエイティブを自動で最適化できます。そのため、過去の実績がなくても、目標に対して最適な配信が可能になると考えたのです。
その結果、オンライン販売分のチケットは前日までに完売するなど、狙い通りの成果を上げました。
これまで自治体が関わる事業の多くは、それぞれの部署で業務が完結している場合もあり、プロモーション戦略もその延長線にありました。しかし今回の事例では、広報プロモーション課から、花火大会を担当する商工観光課などへ働きかけ、データを基に、課題と方向性を整理できたことが、こうした成果につながっています。
3:2023 年の時間への向き合い方、「やりたいことリスト」「今日 イベント」などの検索が上昇
2023 年における人々の時間の使い方や意識の変化を、検索動向から探った記事です。検索からは、人々が「今」により意識を向けるようになったことが見て取れました。
たとえば、コロナ禍における制限がいっそう緩和された 2023 年は、感染症拡大前の 2019 年と比べても「今日 イベント」という検索が増えていました。
こうした「今」への関心の高まりは、行動が自由になってもなお、外出自粛などコロナ禍の制限下で気づいた時間の貴重さを、変わらず感じ続けている、大事にしていることの表れと言えるかもしれません。
また「期間限定 メニュー」「ベストシーズン」など今だけの楽しみへの関心や、「やりたいことリスト」「一生に一度は」など、人生における今の時間の使い方を模索しようとする検索も、前年比で伸びていました。
さらに、日常の買い物や移動から旅行に至るまで、より満足のいく時間を過ごせるように時間の使い方を効率化しようと工夫している様子もわかります。
たとえば「作業できる カフェ」「充電器 レンタル 近く」などの検索増は、働く場所の制限を取り払うことで、仕事もそれ以外も諦めないといった考え方を反映していると言えそうです。
2022 年は時間当たりの成果を重視する「タイパ」の検索が増えていましたが、2023 年は効率を求めて時間をやりくりするだけではなく、自分自身を主語として時間を考えるようなクエリも伸びていました。
なお、同じく 2023 年の検索動向からは、人々がアイデンティティを深めようとする様子も見えてきました。こちらの記事も併せて確認してみてください。
4:2024 小売業界向けデジタルマーケティングガイド
情報と商品の選択肢があふれる近年、人々は買い物に対してより慎重に吟味するようになっています。購入する商品や購入する場所にこれまで以上に注意を払っており、ますます購買環境が複雑化しているのです。
こうした生活者の変化を捉えながら、マーケティングを通じて収益性を高め、競争力を維持するために何ができるのかを、3 本の記事で解説しました。以下はその要約です。
カスタマージャーニーがますます複雑になる中で、生活者は十分な情報に基づいた意思決定をするために Google のサービスを利用しています。多くの選択肢がある環境では、顧客自身が最善の選択をしているのだと確信できるようにサポートすることが、他社との差別化につながります。
また生活者のプライバシー保護とデジタルマーケティングや効果測定を両立させるための対応も重要です。人々の同意の上で取得したファーストパーティ データを基盤に、Google AI ソリューションを組み合わせれば、プライバシーを尊重しながら投資対効果(ROI)の向上を期待できます。
人々は熟考して購入を決めるようになっている一方で、年末のセール時などには活発に買い物をする傾向にあります。生活者のこうした心理状態を分析することで、セール前後の長期的なマーケティング計画のヒントも紹介しています。
本記事は US 版 Think with Google の記事を翻訳、編集したものです。
5:これからの広告は「スキ」か「スキップ」か:YouTube Works Awards Japan 2024 審査員長、細田高広氏インタビュー
YouTube を通じて高い広告効果を獲得し、ビジネス目標の達成を後押ししたキャンペーンを表彰する「YouTube Works Awards Japan 2024」。審査員長を務めた、株式会社TBWA HAKUHODO の細田高広氏へのインタビュー記事です。
細田氏は現在の広告業界について、「エンタメ化」と「テック化」という 2 つの潮流があり、ROI などビジネス貢献へのプレッシャーが高まる中、エンタメ性を追求しながらビジネス貢献を高めることが重要だと指摘します。
その上で細田氏は、この 2 つを同時に満たせる媒体として、YouTube の可能性にも言及しました。YouTube は、AI などによる効率化と、そもそものエンタメの場であるという性質の両方を持っています。「効率よくパーソナライズすると同時に、みんなで楽しめるエンタメ性も追求するといった、2 つの要素の掛け算に優れた広告のヒントがありそう」だと話します。
また今後の動画広告は、「スキ」と思われるものと「スキップ」されるものに二極化していくと予想しており、人の気持ちを動かしながら、ビジネスを動かすという 2 段構えの思考が求められていくと展望しています。
以上、2024 年によく読まれた記事 5 本を紹介しました。記事下の「あなたへのおすすめ」欄から、関連する記事もぜひご覧ください。