AI の進化とともに、検索広告にも変革が起きています。Google の「インテント マッチ」はその 1 つです。
長らく「部分一致」と呼ばれてきた検索広告のマッチタイプは、2024 年 7 月にインテント マッチに変わりました。これは単なる名称の変更ではありません。ユーザーの検索意図をより正確に理解し、さらに適切な広告を表示できるようになった機能自体の進化を示しています。
今改めて理解しておきたいインテント マッチの価値や、実際の企業による活用事例を取り上げた、3 つの記事の要点をまとめました。
1:検索広告の部分一致を「インテント マッチ」へ改称した理由とは
1 本目は、「部分一致」を「インテント マッチ」に改称した背景を詳しく解説する記事です。
テクノロジーの発展とともに、ユーザーの検索行動は複雑化しました。検索クエリはより具体的になり、単語だけでなく文章での検索も増加しています。また画像検索や AI チャットボットなど、テキスト以外の検索方法も普及しつつあります。
こうした生活者の変化やテクノロジーの発展に伴って、Google の検索広告も「インテント」(意図)を捉えられるよう進化しています。同じ検索クエリでも、ユーザーの状況や関心によって求める情報が異なることを前提に、指定したキーワードだけでなく、共通するインテントを持つ幅広い検索クエリに対して広告を表示できます。
インテント マッチは、大規模言語モデル(LLM)を活用し、何十億ものテキストを学習して実現しました。ユーザー側のインテントだけでなく、広告のテーマやランディングページの内容、自動入札で使用する独自のシグナルなど、企業側のインテントも考慮しています。
たとえば Google 広告上で「一人旅 温泉」というキーワードを設定した場合、インテント マッチでは、「湯治の旅」「大宮から電車で行ける温泉」など、キーワードとは一致していないが、ユーザーの意図に合ったクエリにも配信できます。マーケターが想定していなかった検索クエリを発見することもでき、自社に適したインテントを持つユーザーにさらにアプローチしやすくなるのです。
インテント マッチは、キーワードの提案も含めて AI がサポートするので、運用の負担軽減にもつながります。その分、ネクストアクションの検討やクライアントサービスなど、より付加価値の高い業務にリソースを割けるようになるでしょう。
2:言語モデルの進化で「インテント マッチ」が強化――いま改めて注目すべき理由
インテント マッチの背景にある AI 技術の発展に焦点を当てた記事です。
インテント マッチの機能自体は、Google 広告の初期から「部分一致」という名称で提供してきました。しかし、実装した当時は、Google のエンジニアリングチームがキーワードの同義語を手作業で書き出すなど、精度の面で課題を抱えていました。たとえば、「自宅でペットを治療(treating)する」という検索に対して「ペットのおやつ(treat)」の広告を表示するなど、言葉の微妙なニュアンスを捉えきれていなかったのです。
そこから LLM の進化により、状況は一変。何十億ものテキストを学習することで、単語やフレーズのさまざまなバリエーションや、並びによって生まれる意味まで理解できるようになりました。
たとえば「アムステルダムからストックホルムへの航空券」と「ストックホルムからアムステルダムへの航空券」の違いを認識し、広告を適切な人に届けられるようになったのです。多言語検索への対応も進化しています。
インテント マッチが捉えた新しい検索クエリから、潜在的な顧客層を発見したり、市場トレンドを把握したりすることも可能になり、マーケターに新たな可能性を開いています。
3:検索広告「インテント マッチ」の力を引き出した 3 社事例 ―― 楽天モバイル、KINTO、JTB
この記事では、インテント マッチを活用して、成果を上げた各社の事例を紹介しています。
楽天モバイルは、携帯電話の契約数を拡大する施策の 1 つとして活用しました。インテント マッチを導入する場合、まずは幅広い検索クエリに対して網羅的に配信し、どのキーワードが効率を維持しながら獲得につながるのか、Google AI が学習する期間が必要です。楽天モバイルの場合も、当初は顧客獲得単価(CPA)が悪化しましたが、運用を続けるとおよそ 1 カ月でパフォーマンスが安定。CPA を改善しながらより多くのコンバージョン(CV)獲得に成功しました。
また KINTO では、2019 年に立ち上げた車のサブスクリプションサービスでこれを活用。Google AI が自動でクエリを捉えるインテント マッチは、新規事業のために顧客ニーズが読みにくい同社のサービスにとって効果的でした。2 カ月間の検証を通じて CV につながった検索クエリを分析すると、「車 分割払い」「クレジットカード 車 買う」「車をお得に買う方法」など、支払いに関するものが多数確認できました。つまり、車を購入するときの支払い方法を調べる中で、KINTO という選択肢に気づいて CV に至る可能性があるということです。こうした新たなユーザーインサイトを発見できたことも大きな成果でした。
旅行会社の JTB も、旅行予約につながる検索クエリを掘り起こしました。例えば、「春 旅行 おすすめ」というキーワードから「今行きたい観光地」という検索クエリにまで広告配信を広げ、予約の獲得につなげたのです。ただし、旅行商品の場合には、目的地や時期によって予約のタイミングが変わります。そのため、いつどのような地域の予約を獲得するべきなのか、それに合わせて広告クリエイティブやランディングページをどのように作るべきなのか、といった戦略の設計が必要です。JTB では、インテント マッチによって運用負荷を軽減できるからこそ、前段のコミュニケーション設計などの改善により力を入れています。
このように、インテント マッチの効果を最大化するためには、適切な学習期間の確保と、マーケターによる戦略的な活用が重要です。記事では、各事例をより詳しく取り上げています。
以上、3 つの記事で、インテント マッチについて紹介しました。マーケティングを効率化する AI の力を、ぜひ試してみて下さい。
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