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セーフティ & セキュリティ

プライバシーを優先したオンライン広告の未来にむけて

シールドとユーザーのアイコンがあるイラスト画像。

すべての人に開かれたウェブを維持するために、広告は不可欠な要素です。しかし、変化する利用者のプライバシー保護への期待に応えられなければ、そのエコシステムの存続は望めません。多くの人々はウェブを閲覧する際に身元や情報が安全に保たれることを求めています。このため、Chromeチームでは先日プライバシーサンドボックスをご紹介しました。本記事では、エコシステムのパートナーと共に開発を行ってきた、サードパーティCookie をプライバシーを最優先に考えた代替手段に置き換える計画の進捗についてご説明いたします。これにより、広告主やパブリッシャーの成功を支えながら、プライバシーが守られた環境で利用者の自由なウェブの活用を可能にします。

サードパーティ Cookie を利用せずに、どうやってウェブ広告の関連性を維持し正確な測定を可能にするのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。昨年、インタレスト ベース広告向けのプライバシー サンドボックス技術(FLoC)を初公開しました。これは「個別の識別子を共通の関心対象をもつグループに置き換える」というアイディアからスタートしたものでした。本日、この技術が Cookie ベースのアプローチとほぼ同等の効果を示したという新たなデータを公開します。FLoC をはじめ、効果測定や不正防止、フィンガープリント対策といった分野に登場する有望な技術の進歩は、まさにウェブ広告の未来を形作るものであり、プライバシー サンドボックスはポスト サードパーティー Cookie 時代における Google のウェブ製品を下支えする技術となるでしょう。

インタレストベース広告

Federated Learning of Cohorts ( FLoC - 協調機械学習により生成されたコーホート、以下はグループと表記) は、似たような関心を持つ人々を大規模な集団にクラスター化することで、利用者に対して関連性の高いコンテンツや広告を届ける新しい仕組みです。このアプローチは、効果的に個人を「群衆の中」に隠し、さらにオンデバイス処理(端末内でのみ処理すること)により個々人のウェブ履歴を保護します。

Google 広告チームは、Chrome の FLoC の技術仕様に定義された原則に基づきシミュレーションを実施し、このプライバシーを優先したサードパーティー Cookie の代替技術を検証しました。その結果、インタレストベース のオーディエンス生成において、FLoC が サードパーティ Cookie の代替として効果的なシグナルを提供できる ことを確認しました。本検証によるマーケットおよび Google 上のアフィニティ オーディエンスへのリーチテストによれば、広告主において 「 Cookie ベース広告と比べて投資 1 ドルあたりのコンバージョン率 95% 以上」 が見込めることが分かりました。ただし、個々の結果は、FLoC が使用するクラスタリング アルゴリズムの強度やリーチするオーディエンスタイプによって異なります。

この検証結果とソリューションが、一般の利用者、パブリッシャー、広告主に提供する価値に私たちは大きな期待を寄せています。3 月に予定している Chrome のリリースでは、オリジン トライアル(※)を通じ FLoC ベースのコーホートの公開テストを開始する見込みとなっており、第 2 四半期には Google 広告で広告主の皆さまにもご協力いただきながら FLoC ベースのグループの検証を始める予定です。早期の利用を希望される場合は、 FLoC ホワイトペーパー で概説されている原則に基づき(私たちが実施したように)独自にシミュレーションすることができます。

※ オリジン トライアルとは、ウェブプラットフォームの新機能や試験的な機能を試験する検証手法。全ユーザー向けに提供される前に機能の有用性、実用性、効果を検証しウェブ スタンダート コミュニティにフィードバックする。

オーディエンスの形成

プライバシー サンドボックスには、サードパーティ Cookie を使用せずに、マーケターが独自のオーディエンスを作成および展開する方法に関する仕様提案も含まれています。たとえば、広告主がリマーケティングを介して以前ウェブサイトに訪問した人にリーチしたいといった時に使われます。

2020 年中には、上記のようなニーズを満たす方法に関して Criteo、NextRoll、Magnite、RTB House などのアドテク業界の関係者から様々な提案が寄せられました。これら業界からのフィードバックをもとに、 Chrome は FLEDGE と呼ばれる仕様提案を新たに公開しました。FLEDGE は 以前の Chrome の提案仕様 (TURTLEDOVE) を拡張したもので、特定の原則やポリシーへの準拠によって定義される「信頼できるサーバー」を使用するという業界から寄せられたアイデアを考慮にいれており、キャンペーンの入札と予算に関する情報を保存できるように特別に設計されています。Chrome では、今年後半にオリジントライアルを通じた FLEDGE の試験を公開する予定です。これにより、アドテク企業は、BYOS (bring your own server) モデルで API を試用することが出来ます。

FLoC や FLEDGE といった提案仕様は、プライバシーを保護しながら関連性の高いオーディエンスにリーチする代替技術の開発を目指していますが、並行してこれらのオーディエンス向けに表示される広告に対する入札金額を決定するための技術開発も進めています。アドエクスチェンジ、デマンドサイドプラットフォーム、広告主の皆さまは、是非プライバシーサンドボックス技術をお試しください。お寄せいただいたフィードバックは、サードパーティ Cookie 廃止後にも広告オークションがシームレスに変わらず機能するよう、今後の開発に活用させていただきます。

コンバージョン測定

Chrome ではプライバシーサンドボックスの一部として、広告主と広告会社の皆さんからサードパーティ Cookie なしでキャンペーンのパフォーマンスを測定可能にする多数のテクノロジーを提案しています。これらの仕様提案は、入札モデルがデータのパターンを認識できるイベントレベルのレポーティング(Event-level reporting)や、利用者グループ単位で正確な測定を提供する集約レベルのレポーティング(Aggregate-level reporting)など、消費者のプライバシーを保護しながら、広告主が求める主要な要件をサポートします。

情報の集約やノイズ付加、デバイスから送信されるデータ量の制限といったプライバシーを保護するための手法を用いることで、提案仕様として公開されている API はプライバシー保護を実現しながら、コンバージョンの測定を可能にします。たとえば、 API のイベントレベルの仕組み は、クリックスルーコンバージョンを測定するためのオリジントライアルで検証できるように公開されています。ノイズを付加し、API が一度に送信できるコンバージョンデータのビットを制限することで、プライバシーを保護します。広告主においては、レポーティングの目的にあわせて優先する最も重要なコンバージョンを選択する必要があります。

今後数か月間をかけて Google 広告チームは、ビュースルー コンバージョンのレポート、効果とリーチの決定、アトリビューションの実行といったユースケースをサポートするために、提案されたコンバージョン測定 API 群が、どのように Google の測定製品と一緒に使用できるかを引き続き検討します。この期間中の混乱を最小限に抑えるため、広告主の皆さまにおいてはグローバルサイトタグまたは Google タグマネージャーを使用して サイト全体のタグ付け を実装することを推奨します。しかし、プロトタイプの開発に移る前には、ノイズの適切なレベルや、集約レベルレポート送信時の最小コンバージョン数など、さらに多くの事項に関する意思決定が必要であり、これらを議論する公開フォーラムへのアドテク企業、パブリッシャー、広告主の皆様の参加をお待ちしています。

広告詐欺の防止

広告に支えられたウェブの健全性は、企業が実際の訪問者と不正なトラフィックを判別できるかどうかにかかっています。そのため、Chrome は昨年 7 月にテスト用の Trust Token API を公開し、ユーザーの ID を秘匿した状態で有効なトラフィックを検証できるようにしました。さらに、利用者のプライバシーを保護しながらモバイルデバイス上での不正検出を改善するための新タイプのトラスト トークン発行者を支援するために、Chrome の次リリースが予定されている 3 月にオリジン トライアルの開始を発表しました。Google 広告チームは、信頼できるモバイル ユーザーの協力を得て本機能の検証を開始し、その結果を公開フォーラムで共有する予定です。

フィンガープリント防止について

プライバシー サンドボックスの重要な目的は、個別ユーザーに関するデータを共有したり秘密裏に追跡したりする、不透明もしくはユーザーから見えない技術から、人々を保護する技術を開発することです。一例としては、端末の IP アドレスを悪用して、オプトアウトの知識や方法を知らない利用者を特定しようとするといった手法があげられます。Chrome は、ウェブサイトの通常の動作を妨げることなく利用者の アイデンティティ を保護するために、IP アドレスをマスクする方法の新たな仕様提案として Gnatcatcher を公開しました。他の提案仕様と同様に、ウェブコミュニティからのフィードバックに基づき今後も改良を続けてまいります。

ウェブのプライバシーの未来

FLoC の初期検証結果や各種 API 群の開発状況そして業界との継続的な対話から、私たちはプライバシー サンドボックスがウェブ利用者のプライバシーを保護強化を実現しながら、パブリッシャーが優れたコンテンツに資金提供するための必要な収入を確保し、広告主が自社製品に適したオーディエンスにリーチすることを可能にする最善の方法であると考えています。Google 広告チームにとって、プライバシー サンドボックスの技術は、ウェブにおける Google 広告と効果測定製品の今後を方向づけるものです。利用者によりよい体験の提供を可能にし、持続性のあるソリューションを広告業界に導入するこの新しいアプローチを今後どう定義していくのか、その議論にぜひ多くの方に参加していただきたいと考えています。

今年はプライバシー サンドボックスに関する進捗のお知らせに加え、実際にみなさんが実施するキャンペーンでこれらの新しい技術をテストできる機会が増える予定です。W3C の Improving Web Advertising Business Group などのフォーラムでのプライバシーサンドボックスの提案仕様に関する公開ディスカッションへの参加や、テクノロジーパートナーとの協力を通じて すでに試行中提案仕様の検証 や評価への積極的な参加をお待ちしています。共にウェブを再構築していきましょう、ウェブがすべての人にとって良いものとなるように。