本記事は、US 版 Think with Google のポッドキャスティング番組「Modern Marketers」を日本語に翻訳し、抜粋・編集したものです。この番組では、業界をリードするマーケターやブランドの責任者らに話を聞き、現代のマーケティングのあり方や実践をひもときます。今回はノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のジム・レシンスキー氏(マーケティング特任教授)が登場しました。なお、ポッドキャスト本編は英語ですが、YouTube では日本語字幕で視聴可能です。
右脳と左脳、どちらも大事 ―― 全脳型マーケター
2022 年度の年間最優秀教授に選ばれたレシンスキー氏は、30 年以上の経験を持つマーケティングの専門家です。代表的な著作『Winning the Zero Moment of Truth(ZMOT)』は、世界中で 30 万人以上のマーケターに読まれています。Think with Google にも寄稿(マーケティング計画を、経営層目線の「投資計画」に変える方法)があります。
レシンスキー氏は、現代のマーケターは「全脳型マーケター」を目指すべきだと述べました。この全脳型マーケターとは、右脳的資質、つまりクリエイティブな判断力、革新的な精神、またはリスクテイクの精神を持つことと、左脳的資質、客観的なデータに基づいて分析し、実践することの両方を兼ね備えることです。
レシンスキー氏は、現代のマーケティングがより複雑になる中で、「クリエイティブなセンスと、データに基づく分析や判断力の両方を兼ね備えること」がこれまで以上に重要になっていると語ります。テクノロジーやデータがますます重要になる世界において、創造性と分析力の両立が必須なのです。
週に 5 回は AI を使ってほしい
レシンスキー氏はマーケターに対し、ビジネスまたは生活管理のために AI ツールを週に 5 回は使用するよう呼びかけています。
とはいえ、もちろん AI は魔法の杖ではありません。データがないところでは何もできないのです。まずはモデルを訓練するためのデータの確保が大事です。レシンスキー氏によると AI の活用は一足飛びにはいかず、赤ん坊が成長するように「Crawl(ハイハイ)、Walk(歩く)、Run(走る)」と段階を踏む必要があると言います。そして、多くのマーケターがまず取り組むべきなのが、最初の「Crawl」、つまり基礎を固める段階です。その第一歩として、モデルを訓練するためのゼロパーティ データやファーストパーティ データを確保することが重要だと述べました。
なおこの考えは、レシンスキー氏が次世代のマーケティングリーダーを育成するノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の講座でも実践しています。「ビジネスの現場で実際に使われているからこそ、教室でも採り入れるべきだ」という考えのもと、学生たちにも AI 活用の機会を設けているそうです。たとえば、論文執筆の初期段階でアイデアを出すためのブレインストーミング相手として使ったり、完成した論文の文法や論理をチェックする優秀な編集者として活用したりと、さまざまな使い方を提示しています。
前半のエピソードは、全脳型マーケターとして現代のマーケターに求められる資質を、後半のエピソードはレシンスキー氏の AI に対する向き合い方や活用方法を示したものです。ポッドキャストでは他に、 マーケティングを企業成長に結び付ける投資対効果重視の考え方や、「運命に歩み寄る(Meet the universe halfway)」という考え方に基づくキャリア論などについても触れています。なお、ポッドキャスト本編は英語ですが、YouTube では日本語字幕で視聴可能です。