US 版 Think with Google が 2025 年 7 月に公開した記事を基に日本語に翻訳し、編集しました。
YouTube は過去 20 年間で、単なる動画共有サイトから、200 億本以上の動画を視聴できる米国で最も視聴されるプラットフォームへと進化しました。
その間にクリエイターも、Web カメラで趣味の動画を制作する人から、ハリウッドばりのスタジオを構え、世界的なファン層を持つ人(英語)まで、広がっていきました。またファンはあらゆるデバイスで動画を視聴しており、米国では現在、YouTube を視聴する手段として、モバイルを抜いてインターネットに接続したコネクテッドテレビ(CTV)が最も多く利用されています。
こうした変化により、従来の直線的な生活者の購買プロセスにおける動画の役割を見直す必要が生じています。
新しいタイプの購買プロセス
ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、「マーケターは従来のファネルという考え方を超えるべきときが来た」としています。同社の調査(英語)では、現代の購買プロセスはもはや直線的ではなく、サーチング、ストリーミング、スクローリングという重なり合う 3 つの行動に分散していると指摘しています。
同調査によると、顧客の選択に良い影響を与えるタッチポイントを中心にマーケティングを立案することで、従来のアプローチでは得られない機会が生まれることが明らかになりました。BCG はここで言う「良い影響」を、「生活者の記憶に残り、その購買意欲や実際の行動に意味のある変化をもたらす力」と説明しています。
実際に 1 万人の米国在住の買い物客の行動を分析した結果、動画の役割は、もはや単に商品を知ってもらうだけにとどまらず、購買プロセス全体にわたって大きな影響力を持つことが明らかになりました(*1)。
同調査によると、動画が購買プロセスで何らかの役割を果たしたと答えた人のうち、「製品購入への関心を高めた」が 43%、「製品やブランドを認知するきっかけになった」が 50%、「購入する製品やブランドの選択に役立った」が 45%、「特定の商品の購入を後押しした」が 34% という結果になりました(*1)。
このように、購買プロセスにおいて動画が重要な役割を果たしていることは明らかですが、すべてのプラットフォームが生活者の意思決定に等しく重要というわけではないことも、同調査で明らかになっています。調査によると、他のソーシャルプラットフォームと比べて YouTube は、ブランドの比較検討にプラスの影響を与える可能性が 1.7 倍、購買決定に好影響を与える可能性が1.6 倍という結果でした(*2)。
従来のファネルを前提にしたメディアプランでは、YouTube が購買プロセス全体で果たす非常に大きな役割を見落としがちです。たとえば同調査で 2 つのカテゴリを対象に、購買決定に与える影響の大きさと YouTube が広告費に占める割合を比較したところ、マーケターは YouTube を十分に活用しきれていないことが判明しました。この乖離は、従来のモデルでは機会損失が生じていることを明確に示しています。
影響力の新たな価値基準:注目、関連性、信頼
従来のアプローチでは、インプレッション数に比例して影響力も大きくなるという前提に立ち、幅広いリーチの獲得を優先してきました。BCG の調査では、タッチポイントが購入に与える影響を最も良く説明する、より深く人間的な 3 つの要素として、「注目」「関連性」「信頼」を提示しています。
これを生活者の視点から考えてみましょう。「注目」は、無数の情報があふれる中でコンテンツが自分の興味を引きつけたときに向けられるもの。「関連性」は、そのコンテンツが自分の興味やニーズに応えていると感じたときに生まれるもの。そして「信頼」は、信ぴょう性の高い情報と、それを発信する親しみやすいクリエイターに対して抱くもので、それによって自信を持って意思決定できるようになります。
BCG の分析によると、プラットフォームによっては注目、関連性、信頼のいずれかに偏る傾向がある中、YouTube はその 3 つすべてで優れていることがわかりました。また、調査対象の買い物客は、他のソーシャルプラットフォームと比べて YouTube 上のコンテンツは、注目は 1.5 倍、関連性は 1.7 倍、信頼性は 2 倍高いと回答しています(*2)。
これは長尺コンテンツのプラットフォームと比較しても同様です。YouTube は、注目、関連性、信頼のすべての点でリードしています。同調査によると、YouTube では他のストリーミングプラットフォームと比較して、コンテンツに注目し、関連性を見出し、信頼する可能性が、いずれも 2 倍高いと回答しています(*2)。
これは、YouTube のファンが、企業が従来想定してきたような直線的なプロセスをたどっているわけではないからです。人々が本当に求めているのは、心を動かされ、つながりを感じられる体験なのです。
没入型のストーリーテリング(英語)であれ、スポーツ実況(英語)であれ、ショート動画(英語)であれ、コンテンツやフォーマットの垣根を越えた YouTube ならではの体験は、ブランドが人々とつながるための、かつてないほどの表現の場を提供します。そして YouTube のユーザーがクリエイターに寄せる特有の信頼に支えられ、他に類を見ないほどの注目と関連性が生み出されます。実際に Ipsos の調査でも、調査対象のオンラインユーザーは、YouTube クリエイターによるおすすめを、他のプラットフォーム上のインフルエンサーなどによるおすすめと比べて、信頼する可能性が 98% 高いと回答しています(*3)。
YouTube 上で注目、関連性、信頼を築くには
これからの時代に成功するのは、ただユーザーを追いかけるようなブランドではないでしょう。成功するのは、ユーザー自身が作り出すカルチャーの中で、どのように深いつながりを築くべきかを理解するブランドです。そのためにはリーチ第一主義から脱却し、注目、関連性、信頼を最大化する思考へと転換する必要があります。
Google では、企業や広告代理店の皆さまがこの新しいアプローチを実践し、YouTube を最大限に活用できるよう、パートナーとして支援しています。また、その広告効果を正しく測定するため、現代の生活者がどのように意思決定を行うかを反映した、AI を活用した新たな指標やインサイトの開発も進めています。
現在のマーケターには、新たな使命が課せられています。それは、単にインプレッション(表示回数)を買うのではなく、インプレッション(印象)を残すことです。