1 年前の2022 年秋、Google Japan では国内 3 万人を対象に旅行に関する意識や動向を調査しました(*1)。
同調査では、「一人旅」「友人・知人との旅行」「パートナーとの旅行」など旅行スタイルの切り口から分析。年齢やライフステージにかかわらず、コロナ禍で増加した「ひとり時間」などの生活様式が、旅行のスタイルにも影響を与えていることを示唆しました。また人々が多様な旅行スタイルを柔軟に使い分けていることも見えてきました。
では、旅行に求める要素や計画の立て方は、旅行スタイルごとにどのように変わるのでしょうか。2023 年 3 月から 6 月にかけての調査では、実際に旅行を予定していた人を対象に、旅行前後でアンケート(*2)やインタビュー(*3)を実施しました。その結果を基に、人々の旅行のあり方を全 3 回の記事で掘り下げます。
一人旅や家族旅行など、スタイルごとに「旅で重視する要素」を分析
ある人がそれぞれの旅行スタイルごとに重視している要素を探るために、採用したのが因子分析という手法です。回答の背景にある意識を、「因子」として共通項でまとめ、旅で重視する要素(重視ファクター)としました。
海外旅行編:8 つの重視ファクターから分析
まずは海外旅行について見てみましょう。重視ファクターを下図の 8 つに分類しました。
ひと口に海外旅行といっても、そのスタイルによって旅に求める要素は大きく異なることがわかります。それぞれの特徴を見ていきます。
一人旅:
「予算に見合った体験に出会いたい」「歴史や自然、異文化を目の当たりにしたい」が高い一方で、「SNS や作品で見た場所を追体験したい」「話題の場所に行ってトレンドに乗りたい」といった要素は 4 つの旅行スタイルの中で最も低いという結果でした。
流行を追いかけるよりも、自分の趣味嗜好を追求したいという意識がうかがえます。
家族旅行:
特徴的なのが「ストレスフリーで行動したい」「慣れた場所で魅力を追求したい」が高いことです。この 2 つを重視しているのは家族旅行だけでした。家族旅行ならではの苦労や手間をできる限り感じずに旅行したい、そのためにも旅行先は以前に行ったことがある場所にしたい、といった意識が見えます。
配偶者・パートナー旅:
「歴史や自然、異文化を目の当たりにしたい」が高い一方で、それ以外のファクターは全体平均よりも低い傾向です。予算や流行にとらわれず、2 人だけの特別な体験を楽しみたい意識が見えてきました。
友人旅:
「SNS や作品で見た場所を追体験したい」が高く、趣味が合う友人との旅行を楽しんでいるようです。
国内旅行編:7 つの重視ファクターから分析
続いて、国内旅行についても同様に因子分析の結果を見ていきます。海外旅行と共通する「予算に見合った体験に出会いたい」「SNS や作品で見た場所を追体験したい」「サポートが充実した環境で旅を満喫したい」を含む以下 7 つの重視ファクターに分類しました。
全体として、海外旅行では異文化探求など新しい刺激を求める傾向が強かったのに対して、国内旅行では旅行ならではの楽しみは求めつつも、その前提として安心安全な環境であることや癒しが得られることを重視する傾向が見えました。
一人旅:
「サポートが充実した環境で旅を満喫したい」が高い一方で、「SNS や作品で見た場所を追体験したい」「極力疲れずに過ごしたい」といったファクターは低く、不安を極力感じず、気兼ねなく自分の趣味を満喫したい意識が高いようです。
インタビュー調査でも、こうした傾向を裏付けるコメントがありました。
家族旅行:
他の旅行スタイルと比べた時に特徴的なのが「極力疲れずに過ごしたい」が高さです。海外旅行と同様に、旅行中のストレスを軽減することを重視しています。
インタビューからも、ストレスを最小限に抑えるために念入りに準備する様子がうかがえます。
配偶者・パートナー旅:
「静かで落ち着いた観光スポットで過ごしたい」が高く、パートナーと2人だけの世界に浸りたいという意識が見えます。また「予算に見合った体験に出会いたい」という意向は低く、予算を気にせず特別な体験を求める意識があるようです。
友人旅:
「SNSや作品でみた場所を追体験したい」「日常にはない新しい刺激を取り入れたい」が高く、旅行を通じて非日常を味わいたいという意識が見えてきます。
さて、ここまで見てきたとおり、旅に求める要素が旅行スタイルごとに異なることは明らかです。
ではこうした違いは、旅行を計画する際の情報収集や利用するツールにも影響を与えているのでしょうか。次回の記事ではその点を詳しく紹介します。
連載「2023 年の旅行動向」
- 第 1 回:旅行スタイルによって、旅に求める要素はどう変わるのか
- 第 2 回:一人旅、家族旅行 ―― 旅行計画中の情報収集からなにがわかるのか
- 第 3 回:満足度の高い旅行は計画中から始まっている
Contributor:
斎藤 圭右 アナリティカルリード
朴 ヨンテ コンシューマーマーケットインサイトチーム シニア リサーチ マネージャー