「テレワークを続けたい」人はオンライン消費も活発、暮らしも前向きに:3000 人に聞いた今・これからの働き方

小林 伸一郎 / 2020年6月

テレワークという言葉自体は、決して新しいものではありません。日本では、2007 年に政府が「テレワーク人口倍増アクションプラン」を発表し、その普及を推進しています。そのときの目標は、「2010 年までに就業人口の 2 割をテレワークに」というものでした。

しかし、Google が 2020 年 4 月の最終週に実施した調査(*1) では、関東・関西地域において、1 月頭の時点でテレワークをしていた有職者はわずか 8% 程度。対して、緊急事態宣言後の 4 月末時点では、47% にまで一気に上がりました。これをオフィスワーカー(固定のオフィスを拠点にしてデスクワークや外出をする内勤職や営業職など)に限定すると、導入率は 62% にまで上昇します。さらに 2020 年 1 月以降、新たにテレワークを始めたオフィスワーカーの「継続したい」という回答が「継続したくない」を大きく上回ったことは、特筆すべき結果です。

従来のテレワークと、新型コロナウイルスによって始まった「今」のテレワークの違いについて考えてみると、

  1. 各自の事情とは関係なく、多くの人がその当事者となったこと
  2. 社内・社外の仕事相手も同じ事情によってテレワークすることになり、相互に共感が生まれたこと
  3. 1 カ月を超える期間の中で、人々がテレワークに順応していったこと

この 3 点が重複して起こっているのが「今」のテレワークの特徴です。これはテレワークに限らず、働き方を変えるためには、できる企業やできる人から徐々に変えるという方法ではなく、一斉に変えてその上で発見した不都合を修正していく、という方法が有効であることを示唆しています。

ただし、人々がテレワークを継続することで、企業の生産性が下がってしまうのであれば、経営者としてはなかなかテレワークに積極的になることは難しいでしょう。

そこで今回は調査結果を基に、テレワークに肯定的な人たちの仕事中と仕事外の時間の使い方について深掘りし、「暮らしの中のテレワーク」について考えていきたいと思います。

テレワークを「続けたい」人の 1 日はどう変わった?

テレワークによって、勤務時間はどのように変わったのでしょうか。調査結果によると、44% の人が「変わらない」と感じ、ほぼ同じ割合で、勤務時間が「減った」「やや減った」と感じているようです。なぜこのような変化が起こっているのか、1 日の時間の使い方の変化とテレワークの満足点を照らし合わせながら見てみましょう。

テレワークによる勤務時間の変化

250_COVID_WFH_01_1600_200605_ver1.png

1 つ面白いデータがあります。勤務時間について、全体的にはオフィスで働いていた時と変わらないとする回答が多かったものの、テレワークを継続したいと考える人たちは、そうでない人たちに比べて、オフィスで働いていたときよりも、始業、終業時間ともに早くなったとの回答が多い傾向がありました。

テレワークによる始業・終業時間の変化 上位 3 項目

250_COVID_WFH_02_1600_200605_ver3.png

早めに仕事を始められる理由は、通勤の時間がなくなったからです。また、通勤電車で心身を消耗することなく仕事に臨めます。調査結果でもテレワークの利点として挙がっているように、集中して仕事ができ、また「とりあえず」で出ていた会議が減る傾向にあるため、全体の勤務時間も短縮。同僚や上司、部下とのちょっとしたやりとりは、チャットツールをうまく活用し、他の業務と並行して済ませてしまうこともできます。つまり個人の生産性が知らず知らずのうちに上がり、結果として成果も出しやすくなっているのです。そんなことも、テレワークが個人のパフォーマンスを上げている要因のようです。

では仕事の終わりはどうでしょうか。オフィスで働いていたときは、仕事が早めに終わったとしても、上司や同僚の目を気にして、なかなか帰れずにいたかもしれません。しかしテレワークでは、仕事の終わりを自分の裁量で決められます。ですから仕事が、終われば終わり。

もちろん、時にはふと思い立って、夜に仕事をすることがあるかもしれません。ですが、オンとオフを自分で決められる点は、結果的に業務効率をあげて勤務時間の短縮につながるため、それほど悪いことではないと感じているようです。

テレワーク継続意向が強い人における、テレワークをしていてよかったこと 上位 10 項目

250_COVID_WFH_03_1600_200604_ver1.png

テレワークへの不満はシステムで解消可能か、企業に求められる柔軟さ

テレワークに肯定的ではない人の不満点の多くは、テレワークに適した環境が整っていないことに起因しています。具体的には、オフィスでないと閲覧できない資料がある、テレワークだと社内コミュニケーションが取りづらい、あるいは現行の社内ツールが社外から使いにくい、などといったことです。ただ実は、これらは企業のシステム整備によって解決できる問題であるため、企業の柔軟な対応の有無が、テレワークに対して肯定的か否定的かの分かれ目であるとも考えられます。

また、テレワークを継続したい人はポジティブに捉えていたフレキシブルな働き方や集中力の持続といった点も、逆に難しいと捉える人も多く、これもまた、企業が従業員に対していかに働きやすい環境を提供できているかによって、テレワークに対する意識が決定づけられている証左であると言えるでしょう。

テレワーク継続意向が弱い人における、テレワークをしていて不満なこと 上位 10 項目

250_COVID_WFH_04_1600_200604_ver1.png

テレワークによる生活意識の変化

テレワークによる生活に対する意識の変化や毎日の時間の使い方について、データを基に分析していきます。

調査結果を見ると、テレワークを継続したいと考えている人たちは、テレワークを始めてみて、かえって家の中で行うさまざまなことに費やす時間が、以前より増えたと実感しているようです。これは、仕事をする時間の増減にかかわらず共通しています。

テレワークになって増えた時間

250_COVID_WFH_05_1600_200604_ver2.png

今後もテレワークを継続したいと考えている人たちは、1 日の時間の使い方がより多面的になってきていると言えるでしょう。

なぜこれが可能なのでしょうか? 今回の調査では、多くの人が通勤時間や移動時間、不要な会議が減ったと感じており、これらをテレワークのよいところと感じているという結果となりました。そこから考えてみると、実は会社において、仕事をしているようで、できていない時間が多かったということなのかもしれません。通勤時間、得意先や社外関係者と会議をするための移動時間、その他にもとりあえず出席する全体会議や形骸化した定例ミーティングなどが、これに入るでしょう。もちろんこれらが悪いということではありません。ただ今回、一斉にテレワークになり、図らずともこのような時間が減ったことで、「実はあまり必要ないんだな」「別に毎回じゃなくていいんだな」などと感じる人も多かったのかもしれません。

こういった時間が節約され、これまでやりたくてもできなかったことができる。もしくはこれまでは目をつぶってきたことに目を向けざるを得ない、ということに気づき始めているのだと思います。

テレワークの継続意向と買い物行動の変化

実は、テレワークを継続したい人たちは、そうではない人たちに比べて、仕事以外にも自宅での新しい楽しみを発見したと感じる人が多く、オンラインでの消費行動も活発化しているようです。データを見ると、テレワークを継続したいと考える人たちは、ネットショッピングの頻度や、そしてそこで買う商品の種類も、以前と比べて増えたと答えています。

ネットショッピングで買う機会、商品の種類

250_COVID_WFH_06_1600_200608_ver3.png

では、いったいどのような商品が、より買われるようになったのでしょうか? 今回の調査では、テレワークを始めてから、支出が増えたものと減ったものを聞きました。

テレワークを継続したい人たちの買い物の行動変化に関する特徴は、まず、生活雑貨(インテリア)に関する支出が、それ以外の人たちに比べて多くなっている点。さらには、有料オンラインコンテンツやフィットネスのような、趣味や娯楽に対する支出も同様に増えています。テレワークによってこうした楽しみを発見したと言えるでしょう。キャリア・資格に関する支出も、オフィスワークに戻りたいと思う人に比べて増えており、こちらも同様に生活を充実させようとする意識がうかがえます。

また、化粧品に関する支出を増やす人は多くても、ファッションに関する支出は、オフィスワークに戻りたいと思う人たちに比べて少ない、という傾向も興味深い点といえます。

食に関しても、テレワークを継続したい人たちは、デリバリーや加工食品の購入が、そうではない人たちに比べて多くなっています。これは、仕事や家事、育児とのペースに合わせて、メリハリをつけているため、といえるのではないでしょう。

本来のワークライフバランスとは

いわゆるワークライフバランスというと、天秤の片方が仕事、もう片方が暮らしで、その 2 つのバランスを保とうとしている状況を想像する人が多いかもしれません。しかしこうやってみると、実は天秤ではないことがわかります。

仕事と暮らしを調和させることで、人々の幸福度を上げていくその仕組みこそがワークライフバランスであり、その意味で、今回テレワークを肯定的に捉えている人は、少なくとも以前のオフィスワークに比べて、ワークライフバランスが取れている状態であると言えるでしょう。そしてこれは、暮らしを優先することで仕事がおろそかになっているわけでは、決してないということも見えてきます。

新型コロナウイルスの拡大によって、否応なく始まったテレワークは、仕事と暮らしの間にあると思われてきた見えない壁を取り払い、突然ワークもライフも同じ場所・同じ時間にしてしまいました。その結果、いくつかの不都合──子供に気を使いながらオンライン会議に出る、家にいる時間が長くなり家の粗が目につく、夫婦でテレワークになりダイニングテーブルの取り合いになる──なども起こります。

しかし、それがいつの間にか、親の仕事をする姿をみた子供に尊敬される、相手の仕事の大変さを理解して同居人への理解につながる、家の快適さをもう少し改善しようと思う、いっそのこともうちょっと広い家に引っ越ししたいと考えるようになっていく──など、前向きに捉え直すことで、不都合が不都合ではなくなっていくと言えるのではないでしょうか。

このように生活者にとってテレワークは、実は働き方の変化というだけではなく、暮らし方そのものを変える取り組みであることがわかってきました。それでは、企業にとってのテレワークとはいったいどういう意味を持つのでしょうか? テレワークを前提としたときに、企業はどうやったら生産性を上げていけるのでしょうか? 次回は、テレワークの本格的な導入を睨んで、今後企業が考えていくべきこと、そしてその理由などについて、データを基に考えていきたいと思います。

Contributor:
アナリティカル コンサルタント 中島 美月

テレワークかオフィス勤務の 2 択ではない:3000 人に聞いた今・これからの働き方