ダイレクトレスポンス目的の投資に加えて、ブランド イメージ目的のデジタル広告の投資が拡大しています。ブランディングを目的としたディスプレイ広告を従来の CPC 入札 や CPM 入札 ではなく、広告を見てもらうことを基準に最適化した vCPM 入札で運用するという新たな入札運用の潮流をご紹介します。
デジタル広告で顕在ニーズの取り込みを狙う、いわゆるダイレクトレスポンス目的の投資は、従来から広告市場の発展に大きく寄与してきました。さらに昨今では、ブランドイメージの確立や理解・購入意向の向上など最終的な購買行動につながるまでの道筋を、デジタル広告によって示すブランディング目的の投資も拡大しています。
この動向は、従来のデジタル広告の指標である 「 クリック ( Click ) 」や「 インプレッション ( Impression ) 」 に加え、その広告がどの程度ユーザーに視認されているかという「 ビューアビリティ ( Viewability ) 」 という視点も必要であることを示唆しています。事実、デジタル広告の現場においては、ブランディングを目的としたディスプレイ広告を、 CPC 入札 や CPM 入札 ではなく、広告を見てもらうことを基準に最適化させた vCPM ( ビューアブル CPM )1入札で運用する手法が一般化しつつあります。
ここでは、ディスプレイ広告を vCPM で運用する場合のビューベースのリーチ 2について、CPC 運用と比較して検証します。なお、配信期間は共に 7 日間、投資規模は同額です。
配信実験期間内におけるビューベースのリーチ
上記がその結果です。モバイルのビューベースのリーチは、vCPM 運用と CPC 運用では大きく異なりました。CPC 運用を 100 とした場合、vCPM 運用では 30% 向上し、ビューベースのリーチ単価を 60% 程度にまで抑えることができました。一方、デスクトップでは、そこまでの違いは見られませんでした。
さらに下記の図の通り、モバイル( Andorid )での配信実験では全体の接触者のうち CPC 運用 と vCPM 運用の両方の広告にリーチした人は 4 割程度にとどまり、それぞれの運用手法で、異なる層に接触していることがわかります。
配信実験期間の重複リーチ
その一方、平均 CTR に関しては CPC 運用のほうが高いということもわかりました。具体的には、配信期間中の vCPM 運用における平均 CTR を 100 とした場合、CPC 入札による運用 ではモバイルが 359 、デスクトップが 233 という数字です。
今回の検証により、vCPM 運用と CPM 運用におけるビューベースのリーチの違いがはっきりと浮かび上がってきました。広告をクリックしてもらうことが目的ならば CPC 配信を採用し、CTR 等の指標によるクリック数で評価すること。また、ユーザーに広告を見てもらうことを優先するなら、 vCPM 配信を採用してビューベースのリーチで評価すること。ディスプレイ広告を運用するにあたり、これらは当然の前提かもしれませんが、今回の検証調査を通して、改めて具体的な根拠によって裏付けることができました。
- vCPM 運用は、特にモバイルにおいてビューベースのリーチが高まり、リーチ単価が低くなる。
- CPC 運用は、vCPM 運用に比べ CTR が高い。
- vCPM 運用と CPC 運用では、ビューベースで異なる層にリーチできる。
それぞれの運用手法の強みを認識し、目的に応じて使い分けることで、機会の最大化につなげることができます。デジタル広告におけるブランディングの第一歩として、「 ユーザーに見てもらうこと 」を目的とするならば、KPI 設定 ・ 運用 ・ キャンペーン評価の各段階において、ビューベースで一貫性を保つことが重要になってきます。