国内スマートフォンゲーム市場が踊り場を迎える中(*1)、海外のスマートフォンゲームは引き続き成長が続き、2018 年時点で 25% (*2)も成長しています。こうした背景を受け、スマートフォンゲーム業界では、国際競争が進んでいます。
インターネットを軸に事業を行う総合 IT 企業のエイチームでも、その主力事業の一つであるスマートフォンゲームビジネスでは、海外展開を積極的に進めています。今回はその主力ゲームタイトルの一つである、『ユニゾンリーグ』の海外での収益化を加速させるため、機械学習を活用して効率的に有料ユーザーを最大化した施策をご紹介します。
スマートフォンゲーム収益化における有料ユーザーの重要性
現在多くのスマートフォンゲームは無料でダウンロードをし遊ぶ事が可能ですので、収益化をする上で欠かせないのは有料ユーザーです。エイチームの『ユニゾンリーグ』においても同様にいかに有料ユーザーを各国において最大化するかが収益化における課題でした。
有料ユーザーを最大化するために、エイチームでは機械学習を活用し、既存ユーザーのゲームのプレイ状況から、有料ユーザーになってくれる確率の高いユーザーを見極め、広告配信(ユニバーサル アプリ キャンペーンの最適化戦略をアプリ内課金をコンバージョンに設定し配信)に自動で反映し運用をする仕組みをすべて自社内で実現しました(下図参照)。
図:エイチームが機械学習を活用して実現した有料ユーザー予測
具体的には、BigQuery に保存した大量の既存ユーザーデータを用いた有料ユーザー化予想モデルの学習と予測を、 Google Cloud Platform の機械学習サービスを活用して行い、そこから予測された結果を広告配信プラットフォーム( Google 広告)に送信することで、新規に有料ユーザー化の確率が高いと予測されたユーザーに優先的な広告配信をする仕組み(有料ユーザー予測モデル)を実現しました。インフラの設定や管理が不要なフルマネージドのサービスをはじめとした Google Cloud Platform の分析ソリューションを用いることで、短期間かつ低コストで機械学習の分析基盤を実装することができました。
また、同社では上述の仕組みの成果について施策実施の有無以外の変動要素を排除して精緻な効果測定を実施するため、アメリカで下記の 2 グループを AB テストで比較しました。
①有料ユーザー化予測を含めない広告配信グループ(コントロール グループ)
②有料ユーザー化予測を含めた広告配信グループ(テスト グループ=効果測定したいグループ)
結果として、② のグループの方が、① のグループより有料ユーザー数は +61% も増加、また一回の有料ユーザー獲得に必要な広告費用は ② のグループの方が ① のグループよりも -18% も下回りました。また、ROAS( Return On Advertising Spend、広告費用対効果)に関しては +106% 向上し、機械学習を活用した有料ユーザー化予測の実施により大きな成果を確認する事ができました(下図参照)。
図:エイチームが機械学習を活用して実現した有料ユーザー化予測の成果
今回の成功の秘訣として、同社ではユニバーサル アプリ キャンペーンの機械学習の下記特性を理解した上で実施したことがあります。
・コンバージョン量を増やさないと機械学習が進まない
1 キャンペーンで 1 日 10 件以上、1 か月 300 件以上のコンバージョンが最低要件
・結果が出るまで 2 週間程度の学習期間は必要
今回の場合、機械学習の精度等を調整しながら施策の有効性が確認できはじめたのは 3 週目以降
今後に向けて
「今後グローバルプロモーションにおいて、より多くのアプリを遊んで下さるユーザー獲得の為に機会学習の活用は必須であると考えています。今回の『ユニゾンリーグ』での施策ではユニバーサルアプリキャンペーンへの機械学習を反映させた運用の効果を確認する事ができましたので、ユニゾンリーグでは配信国の拡大と他のタイトルでの機械学習の活用を進めていく方針です。今後更に学習精度を高めパフォーマンスの向上と配信の拡大を進めていきたいと考えています。」
エイチーム エンターテインメント事業本部 マーケティンググループマネージャー 柴田 健介氏
写真左から順番に奥田隼渡 氏、小林裕幸 氏、柴田健介氏、ショールゴールド エバン 氏
エンターテインメント事業本部 マーケティンググループ プロモーションチーム