近年、日本の企業では、少子高齢化による労働力の減少と長時間労働を解決すべく、働き方や生産性の向上に焦点が当たっています。 実際にマーケティングに自動化を導入している企業の事例から、自動化で得られるメリットを検証しつつ、マーケティング活動の付加価値を高める方法を考えていきましょう。
自動化を導入することの意義
近年、日本の企業では、少子高齢化による労働力の減少と長時間労働を解決すべく、働きかたや生産性の向上に焦点が当たっています。こうした状況の中、企業は少しずつ自動化の導入を検討しはじめています。ある調査会社の予測では、2020 年までに 3 人に 1 人の知的労働者がスマート マシンに置き換わるとされます。1
自動化の導入は、従来日本が得意としてきた製造業の生産現場だけでなく、マーケティング現場でも進んでいます。大量の顧客データや取引データの活用は、企業にとって重要な課題ですが、データから得られる知見をリアルタイムで効率的かつ効果的に次のアクションにフィードバックするには、マンパワーだけでは限界があります。IDC の発表では、2020 年までに全世界で生成・複製されたデジタル情報の総量の 40% がマシン生成データになると予測されています2。実際に Google でもマーケティング領域の自動化が進んでいます。
とはいえ、マーケティング領域における自動化導入の必要性を理解していても、処理がブラックボックス化したり、データがコントロールできなくなるという懸念があるかもしれません。自動化によって結果が出せるのか、使いこなせるのか等、不明な点もあるでしょう。
そこで、実際にマーケティングに自動化を導入している企業の事例から、自動化で得られるメリットを検証しつつ、マーケティング活動の質を高める方法を考えていきます。
マーケティング自動化のメリット
自動化の最も大きなメリットは、マニュアルでは不可能だとされるデータシグナルの解析とリアルタイムなフィードバックおよび情報提供です。人々の意図や変化を即時に捉え、刻々と変わる情報を膨大なデータベースから取り出し、個々人の必要に応じて関連性の高い情報をタイムリーに提供できます。
たとえばビズリーチでは、検索キーワードを入札につなげるため、手作業で不定期にキーワードを管理・追加していました。しかし、年々多様化するキーワードを手作業で追加することはリソースの観点から難しくなっていたため、AdWords スクリプトを活用してキーワードを自動で追加することにしました。これにより、手作業を削減しつつ、コンバージョンにつながる高精度のキーワードをタイムリーに追加することが可能になり、導入前後で比較するとコンバージョンが 32% 増加しました。
楽天トラベルは自動化によって、ユーザーに必要な情報の一覧的かつ迅速な提供を実現しました。商品であるホテルの「 価格 」や「 宿泊プラン 」はリアルタイムに変動するため、広告に反映できていませんでした。そこでマーケティング担当者が、AdWords スクリプトを用いて簡易プログラムを作成し、社内に蓄積された楽天トラベルサイト上のデータと AdWrods の広告クリエイティブを連動させるよう自動化したのです。その結果、導入前後で比較して、より少ない投下リソースでコンバージョン率を 17% 向上することに成功しました。
図:楽天トラベル扱いホテル広告
自動化によって生産性を高めることで、パフォーマンスと成長スピードが向上する
プロセスがブラックボックス化するという懸念から、自動化の導入をためらう企業もありますが、自動化によってマーケティングの成果を高めつつ、同時に組織の運営効率を改善することに成功したケースも存在します。
たとえばリクルートライフスタイルは、「 ホットペッパービューティー 」で、ページフィードを利用した動的検索広告を導入することで、パフォーマンスの向上に加えてリソースの削減という成果を得ました。これは、経済合理性という効果もさることながら、アクションの速度を高めることができたという観点からも、成長に向けた大きな変化でした。同社は他の自動化ツールと組み合わせることで、CTR が 23% 向上、CPA を 8% 削減することに成功しています。
図:ページフィード利用の動的検索広告導入前後の CTR、CPA
自動化を積極的に推進し成長を実現する企業体質に変革する
自動化をはじめとした新しいツールを導入し、積極的にマーケティング活動を革新するには、失敗を恐れず最新のテクノロジーやソリューションを試し、取り入れなくてはなりません。また、必要に応じた社内の人材のスキル開発やマインドセットの変革によっても、進化を加速することができるはずです。
「 じゃらんゴルフ 」のオンライン広告の自動入札の精度を高めるために、リクルートライフスタイルが Adobe Media Optimizer( AMO )に加えて AdWords の自動入札機能拡張クリック単価( eCPC )を導入したケースでは、事前に小規模検証配信を行い、その結果を踏まえて全体展開するという段階的なプロセスで実施しました。
過去の Google の新しい広告ソリューションの導入実績から、新たな広告ソリューションのパフォーマンスが判明するまでの期間について、関係者と合意の上で少しずつ施策を実行したのです。小規模で開始することで新規ソリューション導入のハードルを下げると同時に、学びと成功を積み重ねるプロセスによって、新たなものにチャレンジする土壌も醸成できました。AMO だけ使用していたときと比較して、コンバージョン数を 11% 増加させることができました。少しずつ試験的に導入することで、最終的に大きな成果につなげることができた一例です。
前述した楽天トラベルでは、マーケティング担当者主導でプログラムを作り上げるために、まず AdWords スクリプトの勉強会を行いました。組織の壁や優先順位の違い、エンジニアのリソース確保が困難といった課題を乗り越え、マーケティング担当者自身のスキルを伸ばすことで、迅速に新たな自動化の導入に成功しました。数回の勉強会では、マーケティング担当者が作りたいプログラムにポイントを絞って学習し、実際にスクリプトを書いて自動化プログラムを完成させました。プログラミングという新たなスキルを身につけることで、マーケティング チームの能力を開発したよい例です。
学び
これまでにご紹介した事例の学びをまとめると、以下の3点に集約できます。
・自動化のメリットーマーケティング効率と効果を同時に向上
紹介した各事例では、投下リソースを低減しつつ、より高い成果の創出に成功しています。自動化の導入によって、最新の情報やデータを即座に広告出稿に反映できるだけでなく、広範囲な個々人に向けて、より関連性の高いメッセージを届けることができます。このことがより高い成果に結びつきます。
・組織全体のアウトプットの質を向上
自動化によって、時間のかかる単純作業を効率化できるため、PDCA を迅速にまわしてスピーディーに業務プロセスを改善すると同時に、知見も蓄積することができます。また自動化により余裕ができたリソースを、たとえばより上流の戦略策定など、より付加価値が高くクリエイティブな仕事に配分することもできます。これにより、チーム全体のアウトプットの質が向上します。
・小さなステップを継続して、組織を進化させ続ける
このことは、自動化ツールに限りませんが、変化し続ける事業環境で生き残るための秘訣だと言えます。Google でも、日々さまざまなプロジェクトやサービス、プロダクトが生み出されており、それらを試すことで時代に適応した変化を続けています。
今や単純作業においては、人間よりも機械のほうが素早く正確という場合も多くなりました。積極的に自動化を導入することで、ただ生産性を高めるだけでなく、人間にしかできない、より付加価値の高い業務に集中して、事業の最大化をめざしましょう。