2020 年以降、世界中の人々がステイホームを強いられると同時に、企業の EC 活用も拡大しました。経済産業省の調査(*1)によると、2020 年の国内の EC 市場規模は、旅行関連サービス市場の縮小に伴い、サービス系分野の市場規模は減少したものの、物販分野に限れば、前年比 21.7% 増と、大きく上昇しました。Google でも 2021 年 3 月に EC に関わる生活者動向の分析をお伝えしています。
日本貿易振興機構(JETRO)が発表した、2020 年の「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(*2)」によると、国内外で EC を利用したことがある企業は 33.3%、EC の利用者も「今後、さらなる利用拡大を図る」が 23.7%、未利用者でも「今後の利用を検討している」が20.2%と、今後 EC 利用を拡大すると回答した割合は 43.9% に上り、過去 3 年で最も高い水準です。
また、国境を越えて商品やサービスをネット販売する「越境 EC」の利用も急拡大しています。同調査によると、EC の活用実績がある企業のうち 45.5% の企業が、日本から越境 EC を利用したと回答しています。
拡大する越境 EC、中小企業も積極進出
なかでも、中小企業(*3)による「越境 EC」の利用率は 47.0% と大企業(34.8%)を上回る数字。当面はコロナ禍以前のようなインバウンド需要が見込めない中、越境 EC への期待度は高まっています。
インターネットが普及する前は、国内の商品やサービスが海外で需要があっても、実際に販売するにはさまざまなハードルがありましたし、そもそも海外のニーズを確認することも簡単ではありませんでした。
しかし現在では、ネットを使った世界中への情報発信や、言語の壁を取り払う翻訳機能の充実、物流の整備などにより、越境ビジネスの可能性は広がっていっています。
越境 EC の第一歩、「Googleトレンド」「リテール版トレンドクエリ」で各国のニーズを把握
それでも実際には、2020 年の時点で、インターネットを活用している日本の中小企業はわずか 41% に留まる(*4)中、Google では、中小企業のデジタル化支援プロジェクトを推進しています。その視点から、越境 EC を始めたい、またはより力を入れたいと考えている企業の皆さんが、どのように Google のツールを活用できるかを紹介します。
越境 EC を始めるための第一歩は、各国、各地域の人々のニーズを把握することです。
たとえば自社が取り扱う商品に関係するキーワードの検索量の推移を知りたい場合には、「Google トレンド」が有効です。特定のキーワードがいつ、どれくらい検索されているのかを、国や地域ごとに簡単に確認できます。
また、自社の関連商品やそうした周辺領域などに関するヒントを見つけたい場合や、大まかに各国でのトレンドを把握したいという場合には「リテール版トレンドクエリ」も活用できます。こちらは、日米豪ブラジルのほかヨーロッパ各国など世界 11 カ国(執筆時点)で検索数が急上昇しているカテゴリや、そのカテゴリごとによく検索されているキーワードを把握できるツールです。
あなたのビジネスの「おすすめ市場」は? 越境 EC の準備状況は?——「マーケット ファインダー」で越境 EC の可能性をつかむ
こうしたニーズの把握と同時に、越境 EC の準備や拡大を進める際には、そもそも自社のサイトが海外展開に適した作りになっているのか、自社製品にとって、より親和性の高い国や地域はどこなのかなどを知ることも重要です。
2021 年 9 月に日本版をリリースした「マーケット ファインダー」は、そんなニーズに応えるツールです。
マーケット ファインダー は、大きく分けて 2 つの機能を備えています。
1 つ目は、自社の越境 EC の準備状況をスコア評価する機能です。「何ヵ国で事業を展開しているか」といった企業や事業全体の質問から、「ウェブサイトがどの言語で作成されているか」「サイト上で利用できる支払い方法」「よくある質問のページがあるか」といった具体的な質問まで、簡単な十数問の質問に答えることで、準備状況を点数で把握できます。
2 つ目は、新しい海外市場の発見です。越境 EC を始めるなら、海外のどの地域にビジネスの可能性がありそうか、またすでに参入している場合は、他のどの地域に広げられそうか、自社の ウェブサイトを入力することで「おすすめ市場」をランキングで確認できます。
もちろん、この結果がすべてではありませんが、時間と費用をかけずに、自社ビジネスの「越境 EC」の可能性を探る判断材料の 1 つにはなると思います。
また、海外進出に必要なオペレーションやマーケティング、新型コロナウイルス感染症対策などをまとめたガイドも公開しています。決済手段や、その国の法令、ルールといった海外ビジネスを始めるにあたっての実務的なチェックポイントや、マーケティングを実践する際の心構えも確認できます。
こうした準備を踏まえて、いよいよ広告展開などを絡めた越境 EC を推進していくことになります。現地の生活者の動向に加え、自社の準備状況やビジネスのポテンシャルを把握しておくことで、より効果的なマーケティング展開も可能になるのです。Google としても引き続き、さまざまなツールと知見を通して海外進出する日本企業を支援していきます。