広告の費用対効果(ROAS)を最大化し、ビジネスを加速させるためには、正しい効果測定が欠かせません。……ということはわかってはいつつ、理論だけではなかなか実践につながらない人もいるのではないでしょうか。
今回の総集編では、実際のプロジェクト経験に基づいた架空の物語に沿って、課題意識や実際の方法などを解説する記事を 3 本選びました。
社会や生活者の意識と行動、広告手法や運用方法が刻々と変化する中で、正しい測定による正しい意思決定を下すためには、どういったポイントに留意すれば良いでしょうか。効果測定に必要な考え方や具体的な手法を解説します。
1:効果測定に潜むバイアスを避けるには? 広告を正しく評価するための 4 条件
広告の効果測定においては、広告が機能していることを証明する「アカウンタビリティ」だけでなく、広告の純増効果である「インクリメンタリティ」の計測が重要です。
ただ、そうして実施した効果測定において、バイアスが入り込むことによって正しい測定を妨げることがあります。この記事では、架空のアパレル企業の課題をもとに、バイアスを取り除く方法を解説しています。
アパレル企業のミン氏は、営業アシスタントの採用候補者に対して、店舗の入り口でチラシを配るように指示しました。その結果、顧客数が 10% 増加したため、ミン氏はその候補者を採用することに決めました。
しかし、顧客数の増加を「チラシを配布したおかげ」だと決めつけるのは間違いかもしれません。アパレル店の入り口にいるのは、これからお店に入る顧客です。「すでにお店に入ろうと決めている顧客」に対してチラシを配っても、来店する顧客数との間には因果関係は認められません。これは一種の「ビジターバイアス」です。
このほか、季節性があるものは売れるという「トレンドバイアス」など、正しい効果測定のためには、バイアスを排除して評価しなければなりません。
こうしたバイアスを取り除く方法の 1 つが、「テスト/コントロール」での調査を設計することです。
広告の接触者と非接触者を比べる「ブランドリフト」や、広告前後での回答を分析する「プレ/ポスト調査」で生じるバイアスを避けることができます。
記事では、「テスト/コントロール」を含めたバイアスを取り除くための調査設計の詳細を解説しています。
2:ある CMO の物語:急変するビジネス環境で、意思決定を誤らないための 4 つのポイント
この記事の舞台は、ミン氏の創業から10年後です。全国 200 店舗まで拡大したものの、CMO になったミン氏は、ROAS の悪化に苦戦していました。
ミン CMO の悩みを入り口に、マーケティングにおける正しい意思決定のポイント 4 つを解説しています。
アプリ広告が低調だったことを受けて、ミン氏 はデジタル広告の目標コンバージョン単価を引き下げる一方で、テレビ CM の予算は据え置きとしました。しかしこの施策が裏目に出てしまい、好調だった EC の売り上げは減少、店舗の売り上げも振るわなかったのです。
この意思決定の問題点は、 4 つに大別できます。「目標設定の誤り」「全体視点の欠落」「因果性の弱い広告施策への投資」「フィードバックと最適化の遅延」です。
目標設定に関しては、事業の拡大期に設定した KPI を、状況に変化があった後もそのまま追い続けてしまったことで判断を誤った可能性があります。また各メディアの施策をバラバラに評価し、全体最適の視点を意識していなかったことで施策の偏りにつながってしまいました。
レポートの数字を重視し過ぎてしまうことも、誤った意思決定につながりかねません。数字だけを追うと、コンバージョンしやすいユーザーへの施策に偏ってしまうためです。ミン氏も、目標 CPA を引き下げたことで、新たにブランドを知り商品の購入を検討してくれたはずのユーザーを逃してしまったと考えられます。
KPI の変化の確認が遅れたことも問題でした。ミン氏の会社では、レビュー頻度が四半期に一度だったため、この頻度を高めて市場の近況を把握できれば、機会損失を減らせたかもしれません。
目的に応じて適切に広告効果を測定すれば、より良い意思決定につながっていきます。
3:ある CMO の物語:正しい目的地に向けて 3 つの視点で検証サイクルを回す —— 鳥の目、虫の目、魚の目とは
マーケティング投資においては、正しい目的地を設定した上で、「鳥の目」「虫の目」「魚の目」という 3 つの視点を組み合わせることが大切です。同じくミン CMO のアパレル企業を例に、3 つの視点に基づいた、実践的なアプローチを解説しています。
利益目標を達成できずに悩んでいたミン氏は、友人のアドバイスによって、目的地の設定を誤った上に、単眼的なアプローチが不振の原因だと理解しました。
そこでミン氏はまず、KGI に影響を与える最も大きな要因を特定し、それに合わせて KPI を見直すという、目的地の再設定を行いました。また広告効果を横並びで計測・評価する「鳥の目」で MMM (マーケティング・ミックス・モデリング)に取り組みました。
加えて、「テスト/コントロール」の調査を設計し、「虫の目」で個々の広告施策の効果をミクロで把握したところ、目標まであと一歩のところまで到達したのです。最後に、ユーザー動向とそれに伴う広告効果の変化を把握する「魚の目」で、仮説・検証のループを回し、予算配分を見直していきました。
記事では、各視点の概要だけでなく、具体的な手法を含めて詳説しています。
以上、架空のアパレル企業を舞台に、広告測定の考え方を解説してきました。架空の物語ですが、実際に現場で起こったさまざまな事例からの示唆を反映しています。これらの記事が、皆さんがマーケティング戦略を策定する際のヒントになれば幸いです。
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