自粛から一転、“再開モード”から見えてきた新たなニーズと定着──Google トレンドに見る 6 月以降の変化

尾崎 隆 / 2020年7月

5 月 25 日の全国緊急事態宣言解除を受け、6 月から 7 月にかけては、それまでの自粛モードから“再開モード”へと切り替わりました。首都圏を中心に再び感染が拡大しつつある中で、人々はどのように暮らしを変えたのでしょうか。

今回は 2020 年 7 月 11 日までの Google トレンドのデータをもとに、新しく生まれたニーズや新しく人々に定着しそうな生活習慣について考察します。

検索動向で見えた “再開モード”

人々が活動を再開した “再開モード”──それは検索動向に顕著に表れています。自粛モード中は外食を控えていた人が多く、飲食店の検索量は大きく減少していました。しかし 7 月現在、今いる場所から近くのラーメン屋や居酒屋など必要なお店を探す「近くの xx 」検索は、多くのジャンルで例年と同じような推移に戻ってきています。

緊急事態宣言中はテレワークの影響で、ランチを自炊やテイクアウトで済ませていた人も多いかもしれません。しかしそのランチについての検索にも、再開モードが見て取れます。ランチは地域名と一緒に検索されることが多いワードです。感染拡大が報じられている新宿や、まだ本来の活気を取り戻していない銀座など都心の混雑する繁華街名と掛け合わせた検索はいまだ少ないですが、その他の場所では地域名での検索量が例年の水準に徐々に戻ってきているのです。

検索動向「ランチ 新宿」

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検索動向「ランチ 銀座」

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ここで特徴的なのは、「レストラン テラス」検索の上昇。もちろん季節要因もありますが、これは 6 月中旬から 7 月初旬にかけて、例年の検索量を上回る伸びを示しています。一方で、減少していた「レストラン 個室」は例年並みに戻りつつも、テラスほどの伸びではありません。同様に「お店 コロナ 対策」も都市圏を中心に、4 月のピークを過ぎていったん下がったものの、再度上昇して 7 月に入り再びピークとなりました。「キッチンカー」という検索量が伸びているのも同じ理由でしょう。再開モードに移る中で、外食時のお店を選ぶ際に味や雰囲気だけではなく、換気を意識するようになっており、これは新たなニーズと言えそうです。

検索動向「レストラン テラス」

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検索動向「キッチンカー」

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ビジネス関連ではまず、「オフィス コロナ 対策」「出張」といった検索が 5 月下旬前後から増えてきました。これは 6 月以降の再開を念頭に置いた動きかもしれません。同様に「転職」も例年並みまで回復してきています。「就活 メイク」などの就活関連クエリも徐々に回復傾向にあり、ここにも再開モードが見てとれます。

「夏休み どうする」──検索クエリから考察する新たなニーズ

毎年 7 月ごろに上昇する「夏休み」の検索量は、例年の半分にも至っていません。ただし、例年にはなかった「夏休み どうなる」の検索は増えています。これは、緊急事態宣言発令後に多くの学校が休校になり、その影響で夏休み期間が短縮されたり、開始日と終了日が例年と異なったりと、人々が混乱しているためでしょう。「Go To トラベルキャンペーン」の混乱なども理由の 1 つかもしれません。また「夏休み どうする」「夏休み コロナ」も同様に増えており、夏に向けて過ごし方を迷っている人が多いこともわかります。

他に、今夏新たに上昇を見せた検索クエリは「県内 旅行」です。これは、地域活性化を目的とした補助金施策も、影響を与えていると考えられます。6 月 28 日に予約を開始した北海道民の道内旅行を補助する「どうみん割」の急上昇も記憶に新しいところです。

また、自動車にも新しい変化が生まれていることがわかります。「軽 キャンピングカー」の伸びはもちろんキャンプ利用を想定していると考えられますが、もしかしたら仕事部屋としての需要も兼ねているのかもしれません。

検索動向「軽 キャンピングカー」

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その他にも、自動車領域ではこれからの新しい移動手段と捉える動きが表れています。「ペーパードライバー 講習」の検索量は 7 月に入っても伸び続けています。旅行や遠出に使われることが多い「レンタカー」は、引き続き例年を下回る検索量のままですが、一方で「カーシェア」はレンタカーと比較すると、検索の絶対量は少ないものの、夏に向けて例年通りニーズが戻ってきているようです。この夏、自動車への興味が上昇することが、これらの検索クエリから推察できます。

検索動向「ペーパードライバー 講習」

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検索動向「カーシェア」

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「別荘 中古」「ガレージハウス」など新たな“住”ニーズ

テレワークや自粛の影響を受けて、自宅で過ごす時間が長くなったことは、毎日の生活にも大きな変化を与えました。人々の“住”に対する意識は、さらに深まっていったようです。

「書斎」の検索が「レイアウト」「おしゃれ」といった言葉と共に、高い水準で推移しているのもその 1 つ。また「テレワーク 椅子」の検索量は、以前から多いものの、最近の動向に特徴がありました。検索量は 4 月をピークに一度低下。そして 7 月に入ってまた上昇するという動きを見せたのです。4 月の段階ではテレワークがどれくらい続くのかわからなかったが、7 月時点では長期化すると判断した人が多かったのではないかと推測できます。引き続き感染リスクの高さが報じられている首都圏や北海道での検索が多いのも、テレワークを長期で継続する企業が多いだろうと判断しているからかもしれません。

検索動向「テレワーク 椅子」

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このように自宅環境をよくしていく検索クエリが増えた一方、もっと根本的に “住む環境を変える” というニーズの変化も検索クエリから見えてきました。

例えば「賃貸 戸建て」という検索クエリ。自宅滞在時間が長いからこそ、広さや部屋数、そして他人との距離などを意識した新しい選択基準が表れたのではないでしょうか。また、「3LDK」という間取りの検索も 5 月中旬以降から例年を上回り、7 月にピークを迎えています。一方、賃貸との関連検索では、「宮古島」や「ガレージ ハウス」も急上昇(7 月 14 日時点)。「別荘 中古」の検索量も 6 月末から例年にはない伸びを見せています。これは先ほど述べた“新しい移動手段”と“新しい住”を掛け合わせた、新たなニーズと言えるかもしれません。

「不動産 オンライン」という検索クエリも、自粛時以降現在に至るまで、高い水準のままです。ここにも新たなニーズが生じていることが確認できます。

検索動向「賃貸 戸建て」

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検索動向「別荘 中古」

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買い物は「定期便」が高水準、STAY HOME を経て定着したものは?

こうした新たな“住”ニーズを受けてか、白物家電の検索にも変化が見られます。「エアコン」の検索がその典型例です。例年、夏の足音が聞こえてくるのに伴って検索量が伸びますが、今年は上昇を始めるタイミングが例年よりも早い傾向にありました。「エアコン 掃除」も 6 月ごろに伸びる検索ですが、今年はそのピーク量が一段と高くなりました。自宅にいる時間が長いなら、業者に頼まず自分で掃除してみようと考える人が多いためだと想像できます。

「洗濯機 おすすめ」はすでに例年の水準を超えており、6 月以降ピークを更新し続けています。「冷蔵庫 おすすめ」も、ここにきて再度上昇傾向になりました。もちろん、給付金の影響もあるでしょうが、自宅での時間が長くなると、買い換えたいと思う機会が増えることも想定できます。

検索動向「エアコン」

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検索動向「エアコン 掃除」

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検索動向「洗濯機 おすすめ」

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緊急事態宣言下で伸びが見られた「まとめ買い」は、6 月に入り例年並みの検索量へと戻りました。しかし「定期便」の検索量は、あいかわらず高い水準です。自宅で過ごす生活が常態化し、一定の間隔で必要なものがより明確になったことで、こうした需要が高いままであると考えられます。これは、新たな買い物方法として定着する兆しとも言えるでしょう。

検索動向「定期便」

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新しい定着と言えば、エコバッグ。7 月 1 日から、法令によりスーパーやコンビニエンスストアなどでレジ袋が有料となりました。それに伴い、「エコバッグ」という検索が急速に上がったことは容易に想像がつきますが、他にも「エコバッグ 洗える」「エコバッグ 消毒」も伸びており、感染防止の意識はもちろん、頻繁に使用することでの汚れ解消などのニーズを反映しているとも考えられます。

検索動向「エコバッグ 洗える」

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感染者は過去最多、“コロナ前”に戻るわけではないが……

今回の記事は Google トレンドの 7 月 11 日までのデータを活用しています。検索動向を見ていくと、人々は注意しながらも再開モードとなっていることがわかりました。しかし完全に“コロナ前”に戻るわけではなく、ポストコロナと呼ばれる “これから” に備えなければならないという覚悟や気持ちの切り替えのようなものも、見て取れました。こういった中だからこそ、新たなニーズが芽生えてくると言えるでしょう。

新型コロナウイルスの国内の感染者は 7 月に入り過去最多となりました。引き続き感染拡大防止への努力が必要です。このような状況下で、人々の生活は今後どのように変化していくのでしょうか。

Contributor:
アナリティカルリード 斎藤 圭右 / データアーキテクト 檜垣 貴友

「外出したい」けど……揺れる気持ちが検索動向に──Google トレンドに見る緊急事態宣言解除後の変化