本記事は、US 版 Think with Google のポッドキャスティング番組「Modern Marketers」を日本語に翻訳し、抜粋・編集したものです。この番組では、業界をリードするマーケターやブランドの責任者らに話を聞き、現代のマーケティングのあり方や実践をひもときます。今回は Canva のザック・キシュケ氏(CMO)が登場しました。
AI に対するクリエイターの感情に変化
「Empowering the world to design」(あらゆる人がデザインで輝ける社会をめざす)をミッションとする Canva は、オーストラリアのシドニーで創業しました。2013 年のサービス開始から 10 年余りで、190 カ国以上で毎月 1 億 8,000 万人以上が利用するグローバルプラットフォームへと成長。誰もが簡単かつ直感的に見栄えの良いデザインを作成できるように「生産性と創造性のギャップを埋めることを目指しています」(キシュケ氏)。
Canva にとって直近の大きな変化が AI です。AI の可能性を取り込み、それを人々のワークフローに自然に溶け込ませ、より生産性を高めることを目指しています。
Canva はすでに多くの AI 機能を備えています。画像から背景を削除する機能、テキストによる指示でデザインを生成する機能、そして動画編集機能などです。これらは「デザインプロセスを可能な限りシンプルかつ簡単にする」という Canva の目標を実現するためのものです。
AI に対して、特に Canva を利用するクリエイターの間では当初懸念もあったようですが、キシュケ氏によると「その感情は大きく変化した」と言います。実際に AI ツールに触れる機会が増えるにつれて、多くの人が AI を「チームのもう 1 人のメンバー」、思考のパートナー、共同作業者、そして作業の最後の仕上げをサポートする存在として捉えるようになったのです。
オーストラリア発にこだわった Canva の成長戦略
Canva はオーストラリアのシドニーで創業しましたが、初期から共同創業者の 3 人は、本社をオーストラリアに置いたまま事業を構築することに強いこだわりを持っていたそうです。多くの投資家が「テクノロジー企業なら、シリコンバレーに拠点を移すべきだ。そうでなければ投資しない」と指摘する中で、Canva は自分たちの考えに反する投資家の申し出を断り、自社のビジョンを信じてくれる投資家や支援者コミュニティを見つけました。
キシュケ氏は「現代では、どの場所からでもテクノロジー企業を構築できることを証明できた」と話します。
Canva はオーストラリアにおいては「プロダクト開発とユーザーコミュニティの構築に全力で集中している」と同時に、米国市場とのつながりも重視しており、「米国のユーザーコミュニティや、より広範なエコシステムに多くの時間を費やしています」。こうしたアプローチについてキシュケ氏は「両方の良いところを持っているようなもの」であり、Canva の競争優位性になっていると話します。
この Canva の戦略は、地理的な制約にとらわれず、質の高いプロダクトとユーザー体験に集中することで、グローバル市場での成功が可能であることを示唆しています。日本企業がグローバル展開を目指す上で、自社の強みや独自の文化を保持しつつ、どのように世界とつながり、コミュニティを構築していくかという点で、示唆に富む事例と言えるでしょう。
前半のエピソードでは AI による市場変化に対応したプロダクト機能の進化とクリエイターの意識変化を、後半ではオーストラリア発のテック企業としての成長戦略を語っています。
ポッドキャストでは他にも、Canva のプロダクトを中心としたマーケティング戦略とその哲学についても触れています。