本記事は、US 版 Think with Google のポッドキャスティング番組「Modern Marketers」を日本語に翻訳し、抜粋・編集したものです。この番組では、業界をリードするマーケターやブランドの責任者らに話を聞き、現代のマーケティングのあり方や実践をひもときます。今回は Walmart のウィリアム・ホワイト氏(CMO)が登場しました。
顧客データから未来を読む
ホワイト氏は「Walmart は、その膨大な規模ゆえに、顧客から多くのトレンドや経済状況に関するシグナルを得ています」と話します。
全米に約 4,700 の店舗を持ち、強力な EC 事業も展開している Walmart は、全米人口の約 90% にサービスを提供しています。毎週約 1 億 5,000 万人が店舗を訪れ、毎週 2 億 7,500 万人が EC サイトを訪れています。この圧倒的な顧客接点を通じて、何が売れているか、地域による違いなど、多くの「素晴らしいシグナル」(ホワイト氏)が得られるのです。
独自の豊富な顧客データに加え、第三者データも活用しています。ホワイト氏のチームでは、定例のブリーフィングの際に 20 以上の情報源を調査し、それらを “ 三角測量 ” して、顧客が何を感じ、経済状況の変化にどう反応しているかといった、より根本的な部分に迫っています。「唯一の特効薬はなく、『なぜそうなのか』という問いに答えるために、多くのソースを徹底的に調査する必要があります」
また、インサイトとトレンドを区別することも重要だと述べます。「ホリデーシーズンに家事の負担が増えるといった長期的なインサイトと、最新のヘアカラーのような短期的な販売トレンドを区別することが大切です。短期的な販売トレンドには機敏かつ迅速に対応し、需要の高い商品を適切な場所に適切なタイミングで供給することがビジネス拡大につながります。それと同時に、1 〜 2 シーズン先を見据え、顧客の考えや感情、さらに広範な人間的、文化的なインサイトを捉えることも、小売企業にとっては非常に重要です」
さらに「マーケターはインサイトを学び続ける “ 学生 ” であるべき」と述べ、真のインサイトが競争上の優位性につながると強調します。こうしたインサイトは、データが「何」であるかだけでなく、「なぜ」を突き詰め、さまざまな情報源を照合し、行動や感情の根底に迫ることで得られると説明しました。
「Be it, Do it, Say it」で築くブランドの信頼
ホワイト氏は、Walmart ブランドの核となる価値観についても詳しく説明します。「私たちの普遍的な価値観は『人々がお金を節約し、より良い生活を送るのを助ける』ことです。各種キャンペーンもその価値観に寄り添い、その目的と価値観を感じられるような形で展開することで、誰に対しても響くようになります」
マーケティングチームには「Be it(まずあり方を示し)、Do it(行動し)、Say it(伝える)」というモットーを伝えているそうです。「多くの企業やブランドでは、実際には『Be it』も『Do it』もしていないのに、『Say it』から始めようとしがちです。Walmart は創業以来、組織としてどうありたいのか、そして何をするのかに忠実であり、その上でそれらを伝えることによって、力強くメッセージを届け、ブランドの強みを際立たせているのです」
前半のエピソードは、Walmart という巨大な企業のマーケティング手法を、後半のエピソードは、自社の価値観とそれを実現するための行動規範について示したものです。ポッドキャストでは他にも、ホリデーシーズンに向けたマーケティング戦略や、AIを活用したクリエイティブ制作などについても触れています。