デジタル広告の強みの 1 つは、 広告が視聴者のダイレクトな行動にどれだけ寄与したかを可視化しやすい点にあります。
YouTube ユーザーの 63% は、YouTube は買いたいものを探している時に商品やサービスに関する最も質の高い情報を得られると答えています。また YouTube 広告については 56% が新商品や新サービスをより意識するとし、54% の人が広告の商品やサービスについてもっと知りたくなると回答(*1)。このことからも、YouTube が新たな発見から具体的な行動を起こす起点となっていることがうかがえます。
今回は、YouTube を活用してビジネスを成功に導いたキャンペーンを表彰する広告賞「YouTube Works Awards Japan 2022」の応募作品の中で、特にオーディエンスの意思決定を後押しすることで行動を促し、ビジネス成果を達成したキャンペーンを表彰する「Performance for Action 部門」で部門賞を受賞した作品と、ファイナリスト 6 作品を紹介します。
あえて「使えません」を連呼、ブランドの誤解を解き、新規層の予約につなげた「ホットペッパービューティー」
Performance for Action 部門で部門賞を受賞したのは、株式会社リクルートの『【ホットペッパービューティー】~ナダルとオカンの押し問答~』です。
本キャンペーンの目的は、「ホットペッパービューティー」をまだ利用したことがない人にアプローチすることでした。
マーケットのボリュームと顧客獲得の難しさの観点から未利用者を分析したところ、「ヘア領域」と「リラク領域」において、男性社会人の未利用者の多くは「ホットペッパービューティーは女性だけが使うもの」「美容室だけが載っている」という誤解があり、新規利用の障害になっていることがわかりました。この大きな潜在層に向けて、誤解を解消することが重要でした。
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そのため、未利用者の思い込みである「ホットペッパービューティーは使えない」という誤解を、あえて動画内で採用することで、自分ごと化してもらえる設計にしています。
「〇〇ができる」「〇〇が利用できる」を訴求する従来の広告のあり方ではなく、「使えません」を連呼することで、広告接触者に振り向いてもらうきっかけを作りました。
このクリエイティブを未利用者に届けるために、その層に対して広く効率的にリーチでき、複数回の継続的なコミュニケーションを図るために YouTube を選択しました。そしてメッセージをしっかりと視聴してもらうためにも「TrueView インストリーム広告」「TrueView リーチ広告」、そして「動画リーチ キャンペーン」の 3 つの広告フォーマットで配信し、それぞれの効果を検証しました。
その結果、課題であったブランドの認識についても「ホットペッパービューティーは美容室だけでなくてリラクゼーションサロンの検索・予約もできる」というイメージの認識リフト(リフト率 24.6%)を達成。新規サロンの予約増加率は、リラク篇では 9.1%、美容室篇の動画では 2.2% 増を記録しました。なお、3 つの広告フォーマットのうち、新規サロン予約を最も創出できたのは動画リーチ キャンペーンでした。
指名検索 264.6% 増 を達成した「NURO光」のクリエイティブ戦略
続いて「Performance for Action」部門のファイナリスト 6 作品を紹介します。部門賞は逃しましたがいずれも注目の作品です。
まずはソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社です。同社の「NURO光」は、2013 年にサービスを開始。しかしブランド認知は他社と比べるとまだ低く、利用意向のある層が少ないことが課題でした。そこで認知の向上と、指名検索数、申込件数の増加を目的としてキャンペーンを設計。他社サービスからの乗り換えを目指しました。
事前調査では、ブランドの価値である「サービスの安さや速さ」が伝わりきっておらず、認知後も「信頼やメジャー感」が足りずに契約に至りにくいことが判明。今回の広告では、メジャー感やベネフィット、信頼度に応じた 3 つのコンテンツで訴求しました。
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認知向上には「バンパー広告」と「TrueView インストリーム広告」 、申込件数の増加には「動画アクション キャンペーン」を活用するなど、目的ごとにフォーマットを使い分け。前者 2 つのフォーマットでは、広告のリーチを最大化するために、動画尺や画面サイズ(横長/縦長)などを変えた複数パターンのクリエイティブを制作しました。
またテレビ画面での YouTube 視聴が伸びている背景(*2)を踏まえて、モバイルやタブレットに加えてコネクテッドテレビへも広告を配信。「コネクテッド テレビ ブランド表示オプション」も活用し、商品の URL をワンクリックでスマートフォンに送信する仕組みも導入しました。このように、広告フォーマットや配信面を網羅することで、複数のクリエイティブで接触を図り、確実な認知獲得を目指したのです。
その結果、主要 KPI である申込件数は 20% 増加。外部調査によるブランド認知は 18% とキャンペーン開始前の数値(5%)から増加、同じく順位も 5 位から 3 位に上昇しました。また、指名検索数も昨年同期間対比 264.6% 増 と大幅に増加しました。
“ 念のため ” 購買を後押し、シック「剃らずにいった男」
シック・ジャパン株式会社の新商品「リセット」は、伸びたひげも少ない痛みで剃ることができるのが魅力の商品です。同社は本キャンペーンを通じて、コロナ禍における働き方、生活様式の変化をテーマに、商品の認知拡大を図りました。
リモートワークが進み、身だしなみに無頓着になり、ヒゲが伸びている 20 代~ 30 代の男性に向けて企画を検討。そうした男性たちに対して、商品特性を中心に訴求するのではなく、「ヒゲを剃る必要性があったのに剃れなかった日」を動画で描くことで、「念のため商品を買っておく」という行動を促そうと考えました。
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クリエイティブのテーマは、「剃らずにいった男」。髭を伸ばし、堕落した生活を送っている「野橋照夫(のばしてるお)」を主人公にしています。
リモート会議での急なカメラ ON の指示など、髭を剃る必要に迫られた、共感を呼ぶシチュエーションで 3 篇を制作しました。
その結果、Web サイトへの遷移率(CTR)は 目標比で 545% を達成。SNS でも想定の 2 倍を超える 2.8 万件以上のエンゲージメントを獲得しました。
“ バカ正直な ” レビューでサイト誘導、レノボ「#ぶっちゃけレノ96」
レノボ・ジャパン合同会社では、Chrome OSを搭載したノート型の Chromebook について、「名前は聞いたことがあるが、 実際どう使えるのか、どういうモデルがあるか分からない」 という人が多いことが課題でした。また Chrome OS を搭載した機種は他社も販売しているため、「レノボの Chromebook」を印象付ける必要があったのです。
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そこで「皆が使っているメジャーな選択肢である」「十人十色の便利さと使い心地」をイメージさせることを意識して利用者のレビューを動画にしました。
しかし通常、広告でのレビューは嘘っぽく見えてしまいがちです。そこで同社が制作した「レノボ Chromebook のリアルなレビューぶっちゃけレノ96(クロ)」では、利用者に Chromebook を “ バカ正直に ” レビューしてもらい、ポイントポイントで「バカ正直」で知られるタレントの顔に変わる演出を加えました。
SNS でもレビュームービーのダイジェスト版を配信することで興味を喚起し、サイトに送客。サイトに書かれたさまざまなレビューを読み、自分に合った使い方を発見してもらう狙いです。
その結果、過去実績と比べて動画視聴数は 204%、サイト誘導数もこれまでの実績を大幅に上回りました。
既存ユーザーの 3 倍以上を獲得、HAKUNA「今日も、キミの居場所になる」
株式会社MOVEFAST Compnayが運営する、声でつながる配信アプリ「HAKUNA」は、競合の乱立する配信アプリ市場で、ブランドの認知、理解と利用者の獲得を目指しています。
対象は Z 世代です。同社の調査から Z 世代は「アニメをはじめとするカルチャー嗜好の強いユーザー分布が多い」ことがわかっていたため、声優とボカロP(音声合成ソフトのボーカロイドを通じて楽曲を作り、発表する音楽家) を起用したアニメ MV(ミュージックビデオ)型の コンテンツを制作しました。
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いわゆる MV は音楽と映像を「楽しむうちに視聴完了してしまう」もの。今回も、スキップせずに見続けてもらえるように「心地よく韻を踏んだモノローグ」「声優による演技と音楽の掛け合わせ」を意識して制作。声優の声を最大限に活かした演出にすることで、「声でつながる配信アプリ」というブランドの特徴を伝えました。
長編の MV をベースに、利用者の獲得に最適化した短尺動画も制作。30 秒、15 秒、6 秒のクリエイティブをキャスト別にテスト出稿し、そのパフォーマンスに応じて SNS など他メディアへの出稿素材を選定することで、キャンペーン全体で効率的に利用者を獲得できるように工夫しています。
結果として、キャンペーン全体の KPI であった利用者数は既存ユーザーの 3 倍以上を達成しました。また、2 分の長編 MV と30 秒の動画が同程度の視聴完了を記録。狙い通り、スキップせずに視聴を続けてもらうことができました。
クリエイターにとことん寄り添うAdobe『できちゃう、思い通りの動画』
SNS 投稿を目的とした動画編集が急成長する中、投稿するクリエイターの多くは、モバイルアプリや、SNS の純正編集アプリなど無料アプリを使っています。そこで、アドビ株式会社としては有償の Adobe Premiere Pro を使ってもらうきっかけを作ることが重要でした。
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動画には普段から自分で動画を編集しているタレントを起用し、やりたいことやわからないことは、すぐに検索して、Tips 動画やチュートリアル動画を見るといった、Premiere Pro ならではの利用体験の特徴を訴求しました。
キャンペーン用にオリジナルの Tips 動画を何人もの YouTube クリエイターに依頼して制作(その動画自体も広告として配信)。それらの動画を見たタレントが自分のイメージに合わせて動画編集を行うという広告シリーズを展開したのです。
広告視聴後のリンク先としてランディングページを用意し、興味を持った人が実際に動画編集をイメージしやすいように、操作画面などの動画コンテンツを用意し、動画の出演タレントの追体験ができるようにしました。
その結果、KPI である エンゲージビジット(サイト訪問数から直帰ユーザーを除いたもの)の達成度は 115%、アプリのダウンロード数も目標を達成しました。
「家賃 99 円」イケア家具のイメージ変えた “ 不動産コラボ ”
イケア・ジャパン株式会社は、一人暮らしをしている若い人たちの多くが「イケアのホーム家具やアクセサリーは、自分たちの小さな居住空間に合わない」と感じていることを課題に感じていました。本キャンペーンでは、一人暮らしの物件でもイケアの家具やアイテムを取り入れたハッピーな暮らしをイメージしてもらうことをゴールに設定しました。
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動画は、イケアの人気商品であるサメの巨大ぬいぐるみ「ブローハイ」に命を吹き込む演出で制作。「狭い空間でもハッピーな家に変えられること」を訴求しました。
最近では短尺の広告も多い中、ドラマ仕立てで複数回に分かれた構成に。ストーリーテリングにこだわり、続きが見たくなるような構成にすることで、視聴率を高めることに成功しました。
また実際に小さな家にも同社のアイテムがフィットすることを伝えるために、東京都心の狭小アパートを借りてイケアの家具とアクセサリーでフルコーディネート。家賃を、イケアのセールでよく使われる「99 円」に設定し、入居者を募集することでインパクトを狙いました。さらに都心型の店舗内に、動画に登場するブローハイの不動産屋や、狭い空間をコーディネートした部屋を実際に制作するなど、デジタルとオフラインを融合した戦略で店舗への送客も図りました。
結果的に、物件には予想を上回る約 4 万3,000 件の入居申し込みがあり、およそ 2 万 3,000 人が新たにイケアファミリーメンバーに登録するなど、想定以上の成果を上げました。
以上、Performance for Action 部門でファイナリストに選ばれた 7 作品を紹介しました。
いずれの作品も粒ぞろいで、しっかりとまとまった作品が多い印象。動画視聴後の行動を促すための基本的なポイントをしっかりと押さえていることがわかります。
Performance for Action 部門のファイナリスト 6 作品の紹介と、受賞作品に対する審査員のコメントは動画でも紹介しています。
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