2020 年から 2021 年にかけて、YouTube の利用者数は大きく成長を遂げ、従来の「YouTube といえば若年層が見るもの」というイメージも変わってきています。2021 年 5 月には、日本における 18 歳以上の月間利用者数は 6,900 万人を超えました。そのうち 45 歳から 64 歳の YouTube 月間利用者数は 2,500 万人で、世代人口の 75 % にも及びます(*1)。
このように、幅広い年代で多くの利用者がいる YouTube は、企業のマーケティングにおいても幅広い目的で活用されています。
今回はリーチの最大化や媒体ごとの配分の最適化から、認知向上やコンバージョン獲得につなげた事例を、過去の Think with Google の記事から 5 つまとめました。
YouTube 予算 0.7% から段階的な活用で、新規加入者 12.2 倍の WOWOW——リーチと予算配分のシミュレーションが奏功
元記事はこちら
テレビ放送を手掛ける「WOWOW」では、2018 年時点での YouTube 広告の予算比率は 広告投資全体の 0.7%、YouTube 広告以外のデジタル広告を活用した経験もほとんどありませんでした。しかし 2019 年に 8.1% の予算を YouTube 広告に配分し、テレビ CM 素材を YouTube 広告に流用することから活用を始めました。
こうした判断ができた背景には、デジタルシフトにより、シミュレーションツールでのプランニングはもちろん、広告配信から改善までの PDCA サイクルをインハウスの代理店で実施できるようになったことがありました。
特に Google のシミュレーションツールである「リーチプランナー」と レポートティングツールの「クロスメディア ユニーク リーチ レポート」の活用です。テレビ CM と YouTube 広告の予算配分とリーチを予測し、さらに実際の配信結果まで確認できるようになったことは、マーケティングプランを考える上で効果的でした。
リーチシミュレーションの次は、デジタル専用素材の制作です。認知・比較検討(サイト訪問)・コンバージョン(加入)のどこでどのような顧客層が離脱しているのか、その特徴を推定して「スモールマス(興味関心やニーズによって分類した、マスよりは小さいながらも一定のボリュームを持つグループ)」に分類。それらスモールマスに合わせた 6 パターンのクリエイティブを制作、配信しました。
全体予算は変えずに、YouTube 広告の予算だけを 2.3 倍に増やして施策に取り組んだ結果、オリジナルドラマ『鉄の骨』の広告配信では、検索が 1207% 増、視聴率も 47.54%(日本のエンターテインメント業界の平均は 41%)を達成。さらにドラマジャンルの番組で、当初アプローチしたい層と位置付けていた 20 歳〜 39 歳の女性層の平均加入者数は 2020 年に前年比で 12.2 倍に成長しました。
「ABCD フレームワーク」での制作、2 つの広告フォーマットでブランド認知を高めたエムスリーキャリア
元記事はこちら
「リーチした上で、本当に人々の認知度向上やブランドリフトにつながるのか」「6 秒など短尺の広告でも企業のメッセージを伝えられるのか」——。
YouTube 広告に対するそうした疑問の声に応える事例の 1 つが、エムスリーキャリアが運営する薬剤師専門の転職プラットフォーム「薬キャリ」のケースです。
同社の過去調査によると、薬剤師が転職サービスの利用を検討する際には「そのサービスが有名であること」を重視する傾向がわかっていました。薬キャリの認知率は主要な競合を下回っていることが課題だったのです。
転職という不安な思いを抱える局面において、同社は効果的な認知向上のためにはその人の価値観に寄り添うクリエイティブを制作することが必要不可欠だと考えました。そこで Google の ABCD フレームワークを参考に、クリエイティブ制作にあたって以下のような工夫をしました。これをあらかじめ制作代理店と共有し、双方の共通言語にしたことが、その後の成果の一因になっています。
長尺の TrueView インストリーム広告と、6 秒のバンパー広告の 2 つの広告フォーマットで配信。前者で「視聴に対して最適化」、後者で「リーチに対して最適化」という、配信アルゴリズムが異なる 2 つのフォーマットを掛け合わせることで、リーチ面積の最大化を図りました。
さらに利用者へのアンケート調査(*2)を実施したところ、YouTube での動画視聴がきっかけとなり、商品を買ったりどこかへ行ったりなどその後の行動につながった例が見られました。
以下は 40 〜 60 代の回答からの抜粋です。
- 「居住地近辺のラーメン屋さんを探して行きたいお店を発見し、実際に訪れて食べファンになり、行きつけのお店が増えた」(40 代女性)
- 「関心のあったエリアの動画を見て、想像以上に興味を惹かれ、実際に訪問した」(50 代男性 )
- 「料理のレシピを見て実際に何度も作った。 ダイエット動画を見ながら毎日やっている」(60 〜 65 歳女性)
このように、年代を問わず利用が広がっていることに伴い、中高年層に向けた YouTube 広告の活用も広がっています。
ブランド品や貴金属などの買取販売店「なんぼや」は、認知度向上のために、テレビ CM の放映に加えて、F2(35 歳〜 49 歳女性)、F3 層(50 歳以上女性)に向けて YouTube 広告を出稿。6 秒のバンパー広告と、動画アクションキャンペーンを展開しました。
F2 〜 F3 層へのユニークリーチ単価を見ると、テレビ CM が 14 円に対して YouTube 広告は 2 円と、効率に 7 倍の差が出ています。また YouTube 広告接触者の検索のアップリフトは非接触者に比べて +328% を記録。検索創出のコストはテレビの 2 倍の効率でした。
こうした事例からも、YouTube 広告はもはや若年層に限らず、中高年層も含めた幅広い世代へリーチし、態度変容を促せることがわかります。
月間 2,000 万人に急成長する「テレビで YouTube」——テレビ画面への配信で新機能の認知を広げたスマートニュース
元記事はこちら
テレビ画面で YouTube を見る人が増えています。日本におけるテレビ画面での YouTube 視聴は月間 2,000 万人以上に成長(*3)。コネクテッドテレビ(インターネットに接続されたテレビ)の広告を活用する企業も増えてきました。
スマートニュース株式会社は、花粉症に悩む人向けの新機能「花粉レーダー」の認知向上を目的に、YouTube 広告を使いました。
外出自粛によるテレビ画面での視聴増をきっかけに、広告配信のあり方を捉え直した同社では、テレビ画面での YouTube 広告の効果を検証すべく、通常実施していた「モバイル/タブレットのみでの配信」に加えて「テレビ画面のみでの配信」を追加し、効果を検証。 その結果、後者の寄与によってユニークリーチとインプレッション単価は下図の通り大きく改善しました。
また、「モバイル/タブレットのみでの配信」と「テレビ画面のみでの配信」における視聴者の重複は 1% 未満でした。つまりテレビ画面への配信によって増分リーチを多く獲得できたことを意味します。
デバイス間の重複率は配信金額が大きいほど高まる傾向にあるため、この結果はあくまで一例ですが、モバイルやタブレットへの配信では届かなかった視聴者にリーチできた事例と言えるでしょう(*4)。
YouTube 広告をやり切るとどうなる? Google をテストケースに「リーチ力の可能性」を検証
元記事はこちら
広告業界ではこれまで「テレビのリーチを超える広告メディアは存在しないのでは?」という印象が根強くありました。しかし、人々が接触するメディアのデジタル化が進む中、メディア配分やクリエイティブ制作は、そうした変化に沿ったものになっているでしょうか。
Google が提供する製品やサービスの広告プランニングとメディア戦略を担う Google Media Lab チームでは、2019 年下半期に自社をテストケースとして、テレビと YouTube に広告を出稿。「期間」「エリア」「ターゲット」「出稿量」「予算」などそれぞれ比較するのに適切な条件下で、テレビ CM と YouTube 広告の両者を配信しました。
配信結果を見ると、まずテレビと YouTube 全体で、ターゲットに対して 65.5% 〜 77.8% のリーチを獲得。うち YouTube 単体のリーチ寄与分は 65.2% 〜 75.3% で、テレビ単体のリーチと比較して同レベルかそれ以上(1.1 ~ 1.4 倍)を獲得できています。
また、すべてのテストで、テスト初日から YouTube のほうがテレビより早くリーチを獲得できており、キャンペーンの素早い立ち上がりを実現しました。
この結果は、テストを実施した Google のチームにとっても驚きでした。エリアや年齢を限定してはいるものの、YouTube 単体で大きな成果を期待できることがわかったのです。
いまや YouTube は幅広い世代に、さまざまな場所で見られています。YouTube 広告のフォーマットも多様化し、クリエイティブの工夫を加えることで、さまざまな人へ、効果的かつ効率的にアプローチできるようになりました。
Think with Google は、マーケティング業界に携わる人々に向けて、世界 20 カ国以上で展開している Google のオウンドメディアです。YouTube 広告に関するトレンドや調査データ、事例などをぜひご覧ください。
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/video/