段階的な YouTube 広告活用でマーケティングをデジタル化──タウンワーク、アットホーム、 WOWOW

田中 有里絵 / 2020年12月

コロナ禍における生活者の意識と行動の変化を調査したところ、外出自粛を機に、オンライン飲み会やお茶会、ライブイベントのオンライン視聴、EC サイト上での“ウインドウショッピング”など、デジタルを中心とした新たな行動様式が生まれていました。

新たな行動様式を取り入れている生活者のメディア接点がデジタルにシフトする中で、広告キャンペーンはどのように変わっているでしょうか。

今回は、このような変化に合わせて YouTube 広告に軸足を移した 3 社の事例を、広告予算配分やクリエイティブ制作、そしてユーザー導線設計を含めて紹介します。

*記事中で紹介している動画は予告なく非公開になることがあります。あらかじめご了承ください。

デジタルとテレビの予算配分を見直し、リーチ増につなげた「タウンワーク」

リクルートジョブズのアルバイト情報サイト「タウンワーク」は、アルバイトの求人情報という、競合他社も多く成熟した業界において、人々がアルバイトに応募しようと思い立ったときに「タウンワーク」を想起してもらう方法を探っていました。

リクルートジョブズでもこれまでは、テレビ CM を中心に広告キャンペーンを展開していましたが、求人情報メディアがデジタルへとシフトする中で、デジタル広告へのさらなる投資を検討していたのです。

その結果、認知向上施策として YouTube 広告のさらなる活用に至りました。たとえばタレントを起用したテレビ CM などでは、制作の費用やスケジュールなどの都合から、多くのパターンを撮影して、視聴者の反応に合わせて最適化することは難しいです。また効果検証やその後のリプランニングも、デジタル広告と比べて手間がかかります。しかし YouTube 広告ならこうした PDCA をより回しやすくなります。

とはいえ、これまでの広告予算配分を大きく変更し YouTube に投資する決断には、不安もありました。そこで Google の「リーチプランナー」を使って、予算規模別にテレビと YouTubeの予算配分をシミュレーションし、納得いくまで検討しました。このツールは、広告主や広告会社の皆さんにも活用いただけるため、正確なテレビ CM の発注金額などのデータを読み込ませて、できる限り精密に検証することができます。それが結果として意思決定の後押しにもなりました。

クリエイティブ自体も、デジタル広告に合わせて見直します。YouTube クリエイターとのマッチアップイベントに参加して交流を深めることで、7 組の YouTube クリエイターとコラボした動画を制作しました。

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アルバイトの主力セグメントである若年層を対象に、東名阪でテレビ CM と YouTube 広告を出稿したところ、ターゲット人口に対してのリーチは、テレビを基準にすると YouTube が +6.9%。テレビ単体のリーチと比較して、YouTube を活用したことが +29.0%(+170 万人)のリーチ増につながりました。YouTube の出稿費用もテレビの 3 分の 1 でした。なお、平均フリクエンシーはテレビ、YouTube ともに 大きな差はありませんでした。

テレビ CM を基準にしたときの YouTube 広告の広告効果など

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リーチ結果の検証には、「クロスメディア ユニーク リーチ レポート」を活用。リーチプランナーを使ってシミュレーションした数値と、結果の数値の差異はわずか 5% ほどで、予想以上にシミュレーション精度が高かったことを証明しました。

リクルートジョブズによると、これらの結果を受けてさらに予算別の最適なメディアミックスを検討していく予定です。これまでは、リーチの主体をテレビ媒体と考えていましたが、今後はテレビとYouTube を同等と考え、リーチの可能性を検討し、プランニングからクリエイティブも YouTube に最適な手法を研究していきたいと考えています。

デジタル主体のクリエイティブ制作で効果:アットホーム

最適なメディアミックスを検討するのと同時に、いかに成果につながるクリエイティブを制作できるかも大切な視点です。続いて紹介する「アットホーム」の事例では特に、デジタル広告に最適化したクリエイティブを追求したことが高い成果につながったと言えます。

不動産情報を提供する「アットホーム」では、テレビ CM を中心に認知施策を実施してきましたが、他社も同様の施策を手掛ける中、広告 1 配信あたりの効果をいかに最大化し、ビジネス効果につなげられるのかが課題に。認知獲得を主眼には置きつつも、比較検討や行動といったその後の動きにつながる施策を模索していました。

そこで実施したのが Google の持つ ABCD フレームワークの概念に沿ったクリエイティブのチェックとコンサルティングです。これまでデジタル広告に流用していたテレビ CM の素材をチェックしたところ、点数は 14 点満点中 12 点と悪くなかったものの、デジタルに最適化できる余地があることもわかりました。

アットホームでは、デジタル広告のクリエイティブにおけるルールを厳密に守ったクリエイティブを再設計。明確にメッセージを伝える、テンポをよくするなど、よりデジタルに効くクリエイティブを意識しました。

しかしこれは、言葉でいうほど簡単ではありません。特に、オーディエンスのニーズ別にクリエイティブを変えるため、費用も手間もかかります。クリエイティブの種類を増やすことで成果につながるのか、どういったクリエイティブが必要なのか、制作現場と目線を合わせるためにも、ABCD フレームワークに沿った客観的な判断は大いに役立ちました。このように、クリエイティブ制作の方向性が見えることで、効率的な動きをとることができます。

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動画はこちら

結果的に、YouTube 広告の配信後は、サーチリフト調査で広告接触者の「アットホーム」という検索増加率は、以前の広告接触者と比べて3.2倍になるなど、妥協せずにデジタルに最適なクリエイティブに変更した効果を実感できたとのことでした。

既存のクリエイティブをそのままデジタルに流用することもできますが、広告プランニングの早い段階からデジタル広告を組み込み、デジタルを意識したクリエイティブ制作を行うことで、より一層表現の幅が広くなり、高い広告効果が期待できるのではないでしょうか。

段階的に YouTube へ予算をシフト、新規加入者も 12.2 倍増加:WOWOW

ここまで、デジタル広告への予算配分やクリエイティブを見直すことで、広告効果の向上につながった事例を取り上げました。しかしデジタル広告は広告効果だけにとどまらず、その先のビジネスゴールの達成にも貢献できる可能性をもっています。

テレビ放送を手掛ける「WOWOW」では、“YouTube ファースト”の取り組みで、新規加入者増を実現しました。

放送業界は、今大きな過渡期にあります。顧客が見たいコンテンツを選択する「ビデオオンデマンド(VOD)」の勢いが増す中、サテライト放送などさまざまな新サービスが業界に参入し、競争が激化。これまでの WOWOW の顧客層は 50 代男性ですが、VOD 業界の顧客層と照らし合わせると、 若年層の新規顧客について課題感をもっていました。WOWOW の強みでもあるコンテンツ力が、従来のマス広告だけでは、届けたい層に届けられていないのではないかと感じていたのです。

また、WOWOW では、2018 年時点における YouTube 広告の予算はほぼゼロの 0.7%。デジタル広告を活用した経験もほとんどありませんでしたが、2019 年に 8.1% の予算を YouTube 広告に配分し、テレビ CM 素材を YouTube 広告に流用することからスタートしました。

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こうした判断の背景にはデジタルシフトにより、シミュレーションツールでのプランニングはもちろん、広告配信から改善までの PDCA サイクルをインハウスの代理店で実施できるようになったことは大きな変化でした。

特に「リーチプランナー」と「クロスメディア ユニーク リーチ レポート」を使って、テレビ CM と YouTube 広告の予算配分とリーチをシミュレーションし、結果を確認できるようになったことは、マーケティングプランを考える上で効果的でした。

シミュレーションと広告配信を進めたあと、次に手をつけたのはデジタル専用素材の制作です。Google のクリエイティブ支援チームのサポートを受けながら、認知・比較検討(サイト訪問)・コンバージョン(加入)のどの過程でどのような顧客層が離脱しているのか、その特徴を推定して「スモールマス」に分類。それらのスモールマスにあった、6 つの異なるメッセージのクリエイティブを制作し、配信しました。

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オリジナルドラマ『鉄の骨』の広告配信では、検索が +1207%、視聴率も 47.54%(日本のエンターテインメント業界の平均は 41%)を達成。さらにドラマジャンル の番組では「F20 〜 39(20 歳〜 39 歳の女性層)」の平均加入者数は前年比 12.2 倍に成長しました。他のメディアプランや全体予算は変えずに、YouTube 広告の予算配分だけを 2.3 倍に増やしたことを考えると、YouTube 広告が加入者数に大きな影響を与えたことは間違いないでしょう。

2019 年に YouTube への予算投資を始めて以来、目に見える成果を実現している WOWOW では、少しずつ投資を増やし、今後は YouTube 単体での取り組みも実施。Google のクリエイティブ支援チームと、スモールマスごとに効果的なクリエイティブのパターンを模索しています。デジタルに特化した新規のクリエイティブも制作するなど、常に YouTube 広告の配信を前提にプランニングをしています。

投資と成果が見える化したことで、マーケティング戦略の常識は変わった

これまで、広告投資に対して、リーチや獲得といった成果が見えづらい部分がありました。しかし、さまざまなプランニングツールやレポートツールの登場によって、成果が目に見えてわかるようになり、マーケティングの定石も変わってきました。

特に競争が激しい市場環境では、自社の立ち位置や目的に合わせて、広告プランを変えていかなければいけません。そうした中で、タウンワークは予算配分の見直し、アットホームはデジタル広告向けのクリエイティブ最適化、WOWOW は YouTube を前提とした広告戦略といったように、三者三様の取り組みで成果を実現しています。これらの事例を参考に、目的に合わせて施策を見直してみてはいかがでしょうか。

Contributor:
インダストリーマネージャー 妹尾隆一郎 / シニアアカウントマネージャー 岩城 法子 / インダストリーマネージャー 高柳岳士

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