自粛でアプリ DL は 30% 増 、激しい競争環境でも成長を続けるためのヒント──楽天市場、メルカリ

田中 俊之 / 2020年10月

現在、日本人のインターネット利用率は 89.8%。ほとんどの人が、プライベートでも仕事でもインターネットを使っています。そのうち 73.8%は、スマートフォンや携帯電話などのモバイル端末からです(*1)。こうしたモバイルやそれに伴うアプリの利用は、生活者の情報探索や消費行動にも影響を与えています。

Google マーケットインサイトチームは 2019 年末に「バタフライ・サーキット」という生活者の新たな情報探索行動を発表しました。これは人々が、従来のような認知、理解、購入といったような直線的な流れで購入に至るのではなく、「さぐる」「かためる」を行ったり来たりしながら、かためたはずの選択肢を新たに広げようとしたり、単なる気晴らしの検索で見知った商品を突然ためらいもなく買ってしまったり、といった新たな行動を指しています。日々のちょっとした気になったことをモバイルでつい調べてしまう、買ってしまうといった行動が定着したことによって浮き彫りになったものです。

つまりモバイルを経由した生活者の行動を詳細に観察すれば、いち早く生活者の動向に寄り添ったメッセージも発信できるのではないでしょうか。

自粛要請でアプリ DL 数は 30% 増、競争が増す中での成長のカギ

新型コロナウイルスの影響によるライフスタイルの変化も、モバイルの利用から見てとれます。2020 年 2 月末の政府によるイベント自粛要請や全国の学校への臨時休校要請を境に、モバイルアプリ全体の総ダウンロード数は 30% 近い伸びを見せました。2 月から 7 月までの各カテゴリーにおける月間アクティブユーザー数の推移(*2)を見ると、特定のカテゴリーだけではなく、幅広いカテゴリーで利用が活発化したことがわかります。「ゲーム」は休校要請の影響で 3 月に一時的に急増した後、減少傾向になったものの、その他のカテゴリーでは 7 月まで安定した伸びを見せました。

月間アクティブユーザー数の推移 上位 10 カテゴリー

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「写真 / ビデオ」や「ソーシャルネットワーキング」など、多くのカテゴリーでは、5 月末の全国緊急事態宣言の解除による人々の活動再開に伴って伸びが鈍化した一方で、特徴的なのは「ショッピング」ユーザー数が 5 月以降も伸びていることです。2 月と 7 月時点での月間アクティブユーザー数を比較しても、「ショッピング」だけが群を抜いて伸びています。

月間アクティブユーザー数の比較(2020 年 2 月 対 2020 年 7 月)

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Google が 2020 年 4 月から 実施している「生活動向に関する週次調査」からも、人々にとってオンライン全般での買い物が高い水準で定着し始めていることが分かっており、これは「店員を気にしなくてもいい気軽さ」や「時間や場所を問わずに活用できる」というオンラインのメリットに気づいた人が多いからと考えられます。特に気軽さや隙間時間の活用にモバイルは最適である為、買い物においてモバイル EC サイトの利用と合わせてモバイルアプリの利用が活発化しているといえます。

一方で、人々が月 1 回以上利用するアプリの数は平均 30.8 個ですが、月に 31 回以上、つまり平均してほぼ毎日利用するのと考えられるものはわずか 8.8 個です(*3)。この激戦を勝ち抜くために、トレンドを的確に捉えたサービス展開に加え、ダウンロードの促進や利用者のエンゲージメント向上など、実行すべき施策は数多くあります。

こうした厳しい競争環境の中でも、安定して利用者数を伸ばしているショッピング分野のトッププレイヤー「楽天市場」と「メルカリ」がどのようにビジネスを強化しているのか見てみましょう。

Web 経由でのアプリ内購入を促進した「楽天市場」

楽天市場は、インターネット通販の総合ネットショッピングモールです。流通総額の 7 割以上をモバイルが占めており、以前からモバイルファースト視点で、Web とアプリの両方に注力してきました。

競争が激化する中で課題だったのは、既存顧客のさらなるユーザー体験の改善と、それに伴うロイヤリティーの向上です。これまで楽天市場では、顧客のファーストチョイスとなるように、アプリの UX を改善するなど、アプリ利用を促進する施策を実施してきました。一方で、インストールしたユーザーが使いやすい環境も整備していく必要性が高まります。普段アプリを利用しているユーザーが広告経由で訪れる場合にも、広告からアプリを起動させることでユーザー体験の質を落とさないことが重要なのです。

そのために導入したのが、「ディープリンク広告」でした。これは、Web ページの広告から直接アプリを起動できる広告リンクで、検索した情報に応じて、Web からアプリ内の適切な場所に誘導することができます。

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楽天市場では、ディープリンクを使用したショッピング広告と使用していないショッピング広告を用意して、運用結果を比較検証しました。その結果、ディープリンクを使用した広告経由での CVR は、使用していなかった広告に比べて約 3 倍に増加。直接アプリを立ち上げずに検索から商品を探していた既存顧客に対して、求めている情報に応じて適切にアプリに誘導することで顧客体験の質を高め、購入を促すことができたのです。

この結果を踏まえ、楽天市場では広告投資配分を再考。今後検索広告とショッピング広告にアプリへのディープリンクを導入し、アプリ利用者のエンゲージメントを高めることで売上を強化しようと考えています。

「当社は Web とアプリ 2 つのチャネルを持っていますが、当初アプリへの流入を強化することには迷いがありました。アプリをインストールしてもらっても、やはり Web が使いやすいと感じるユーザーも一定数いるのではという考えがあったためです。選ぶのはユーザーであり、そこにマーケターのエゴを加えてしまってよいのか葛藤があったのです」と話すのは楽天株式会社の住谷誠氏(サーチエンジンマーケティンググループ ヴァイスマネージャー)です。

一方で「便利さを求めてアプリをインストールしているにもかかわらず、広告経由でアプリへ遷移できない不便さを感じているユーザーもいるのではとも考え、今回のトライアルへと踏み切りました。結果として高い効果を確認することができたため、新たな目標としてアプリ UX と広告 UX の向上をセットにして進化していくことを掲げ、今後も取り組んでいきたいと思います」と説明しました。

「メルカリ」はフィード機能とアプリキャンペーンの連携で機械学習を強化

続いて紹介するのはメルカリの事例です。同社のマーケティングチームでは、KPI の 1 つであった、アプリの新規登録者の獲得効率を改善するために、Google とその方法を模索しました。

以前から活用していた Google 広告の「アプリ キャンペーン」に、「フィード機能」を使った商品フィードの情報を適用。機械学習を加速させることで、既存顧客とより近い傾向を持つ潜在顧客に対して効率的にアプローチしようと試みました。

アプリ キャンペーンは、あらかじめ設定したインストール数などの目標に対して、機械学習で自動的に広告運用を最適化するものです。「Google 検索」「Google Play」「YouTube」「Google ディスプレイ ネットワーク」といった Google のサービスに横断的に広告配信でき、目的に応じて配信先やクリエイティブの選定、費用の設定など一連の運用を最適化します。

またフィード機能は、商品画像を豊富に広告に組み込むことで、人々がよりシームレスに目当ての商品を見つけられるようにする仕組みです。これまでディスプレイ広告やショッピング広告など一部の広告キャンペーンのみで利用できる機能でしたが、アプリキャンペーンにも対応しました。

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そこでメルカリでは、商品フィードの情報を登録している「Google Merchant Center」の情報をアプリキャンペーンにも活用。商品フィードの情報をアプリキャンペーンに適用することで、アプリの内容に興味のある潜在顧客へのリーチを効率化しようとしたのです。

結果的に、新規登録の獲得単価は 16%、コンバージョン率も 15 ポイント改善するなど、大きな成果を収めることができました。

株式会社メルカリの梶原崇史氏(マーケティングマネージャー)は「フィード機能を活用したアプリキャンペーンは、パフォーマンス改善に寄与する有効な施策だと考えます。我々のような C to C のマーケットプレイスを提供するサービスにおいて、より多くのお客様にご利用頂く上で必要不可欠な取り組みだと思いました。現状に満足せず、引き続き新たな活用にチャレンジしていきたいと思います」とコメントしています。

今回は、ショッピング領域をリードする 2 社の取り組みを見てきました。先進的なプロダクトや施策を導入するのは難しいと感じる読者もいるかもしれませんが、そうではありません。アプリを事業の 1 つの軸としている場合、このような事例を上手く自社に適用することで、ビジネス成長におけるアプリの貢献を高めていく近道となるのです。

Contributor:
アプリプロダクトスペシャリスト 郭 鎧伊

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