「継続利用」を意識したアプリ戦略—— LINEマンガの作品パワーだけに頼らないプロモーション方法とは

長島 大介 / 2020年5月

盛り上がる電子コミック(漫画)市場と「LINEマンガ」

2018 年度の電子書籍市場において、コミック(漫画)の売り上げは 2,387 億円(29.4% 増)と市場の 84.5% も占めており、現在急成長している市場と言えるでしょう(*1)。

今回紹介する「LINEマンガ」は、2013 年 4 月にサービスを開始。現在 38 万点以上の作品を配信しており、アプリのダウンロード数は 2020 年 4 月 1 日時点では 2,700 万を突破するなど、国内 No.1 の電子コミックサービスです。

「読みたい漫画がある」から「常に利用したい」ユーザーの獲得へ。「電子コミック」モバイルアプリの事業課題

現在、LINEマンガを含む主要な電子コミックサービスが注力しているのは、スマートフォン向けのモバイルアプリです。なぜならモバイルアプリは表示が速く、さらにホーム画面に表示されるため、ユーザーにとっては利便性が高く、それゆえ電子コミックサービスと親和性が高いからです。

一方モバイルアプリは、ウェブサイトとは異なり、ユーザーに「インストール」してもらわなければなりません。そのアクションを促す方法として、「読みたい漫画がある」をきっかけにすることが多く、結果として「漫画タイトル」を打ち出した広告投資の比重が高くなります。

ですから、その漫画タイトルを読み終えると、アプリを利用しなくなる傾向にあるのも事実です。では継続的に利用してもらうためには、どうすればいいでしょうか。その方法のひとつとして、「時間があるときは漫画を読みたい」というユーザーに、いかにしてサービスを知ってもらうかも、大切な視点となります。

継続利用を増やすために──アプリユーザーとの親和性から YouTube に注目

YouTubeにおいて「漫画」に関するキーワードで検索される量は、2017 年から 2019 年までの間に 6 倍以上に増加しています。YouTube 視聴には 5 つの大きな動機がありますが、特にその中でも「暇を豊かに」「身近な娯楽」と「漫画読者」の親和性は高く、 YouTube の中でも漫画は人気を集めているからと考えられます。

LINEマンガにとって、親和性の高い場所でコミュニケーションを展開していくのが、ひとつのアクションとなるのは自然な発想です。そのような場で獲得したアプリユーザーは、親和性が高いからこそ比較的継続意向が高いと推察できます。よって、YouTube 視聴中における動画広告を活用することにしたのです。

YouTube で検索された「漫画」関連の検索量の伸び(*)

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(*2)

ただ、YouTube 広告を単なる広告媒体として活用しただけではありません。「電子コミックサービス」の中でもとくに「LINEマンガ」のインストールに効果的な動画広告を制作するため、Google クリエイティブチームと協力して、どのような軸で訴求メッセージを作り込むか分析しました。

統計的な分析手法を導入し、どのようなメッセージがアプリのインストールやその後の継続購読を高めるのに効果的かを、データにもとづき精緻に分析したのです。

その結果は関係者内で、LINEマンガの強みであり、原点を再認識するものとなりました。実は、新しい訴求ポイントが発見されたわけではありません。しかし、漠然と感じていた LINEマンガらしさを訴求することが、継続利用が見込めるユーザー層には実は非常に大切であると、確信を持つに至りました。ここにきて、「LINEマンガ」というサービス自体のもつ価値を再認識し、訴求していくきっかけとなったのです。

そして今回導き出した訴求メッセージを伝えるための動画広告を制作し、「マンガ好き」層など、関連性の高い YouTube 視聴者に、優先的に動画広告を配信しました。

配信された動画広告クリエイティブ例

LINEマンガ アプリインストール単価が 13% 改善(*3)

キャンペーン終了後の効果測定では、想定したユーザーに訴求できたこと、従来の個別漫画作品だけを訴求していた動画クリエイティブに加え、新しい訴求点のクリエイティブにも挑戦したことにより、良い数字を導き出しました。また、継続率を高めていく中間指標として重要な新規インストールユーザーの翌日起動の有無も、今回のキャンペーンでは従来と比べ発生効率が改善され、今後に向けて満足のいくものになりました。

今回の施策による改善

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LINEマンガを担当する LINE株式会社 コンサルティングチーム 小島氏は、今回の取り組みを次のように振り返ります。

「今回の施策で、見込みユーザーと相性のいい YouTube を媒体として活用でき、インストール単価も改善できました。しかしそれ以上に大きな課題であった、作品に依存しない効果的な広告クリエイティブを、データにもとづいて判断できたことが大きいです。現在は、広告クリエイティブ制作の PDCA が今までより高速に実施可能になったため、今後もデータに基づく意思決定、改善を続けていきます」

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※撮影日 2020 年 2 月 14 日

(*4)

Contributor:

高橋ちひろ アカウント マネージャー

ユアン・ガオ アカウント マネージャー

米田 詩織 アプリ ストラテジスト

坪井 典子 クリエイティブコンサルタント

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