US 版 Think with Google が 2022 年 9 月に公開した記事を基に日本語に翻訳し、編集しました。
2022 年 6 月に公開した記事(英語)でも紹介したように、オンラインショッピングやインターネットサービスが普及するにつれて、EC サイトやアプリが生活者の高い関心を獲得し、それがビジネスを拡大する機会になっています。一方、デジタル市場の競争が激化する中で、顧客を獲得し、収益性を高めることは、より困難になってきています(*1)。その中で、成長の可能性として見落とされがちなのが、広告による収益化です。
Deloitte と Google の共同調査によると、Web やアプリビジネスから EC まで、多様なブランドが、自社サイトの広告枠を広告主に販売していないことがわかりました。その背景には、他社の広告がユーザー体験を損なう、あるいは広告の収益化には初期コストが掛かるといった、誤った認識にあります(*1)。
広告による収益化は、多くの業界ですでにスタンダードになっています。実際、ゲーム業界では収益のかなりの割合をゲーム内広告から得ています(英語)。また、こうした方法をすでにうまく活用している EC 企業もあります。
ここからは、広告収益化によるブランドの成長を支援するために、よくある誤解を解き、シンプルな 3 ステップのフレームワークを使って Web サイトやアプリで広告収益を上げる方法を紹介します。
広告収益化の真実とその方法
私たちの調査では、EC サイトやアプリを運営する多くのブランドが、3 つの誤解によって、広告による収益化をためらっていることがわかりました。これらの誤解を検証し、真実を明らかにしていきます。
誤解その 1:他社の広告はユーザー体験を損ない、ブランドイメージを低下させる
多くのブランドは、自社サイトやアプリに他社の広告を掲載すると、ユーザー体験が低下し、買い物中に離脱してしまったり、最悪の場合は競合他社への訪問を促すようになると懸念しています(*1)。
調査結果:Kantar との共同調査によると、他社の広告を掲載しても、ユーザー体験を妨げたり、売り上げを減少させたりすることはありません。さらに、広告販売を最適化しつつユーザーの体験を管理できる広告ソリューションもあります。
たとえば、Web サイトやアプリでは、AdSense と AdMob の広告ブロック機能で、必要な設定管理やパラメータを使用すると、サイトにふさわしくない広告や競合他社の広告を自動的にブロックできます。また、Google アド マネージャーで自社の取引先にのみ広告枠を販売することで、顧客を競合他社の広告に誘導せずに、自社プラットフォーム内での商品の販売と売り上げ拡大を促すこともできます。
広告の収益化が大幅な収益増に貢献することも、アーリーアダプターを観察することでわかりました。たとえばスーパーマーケットチェーンの米 Walmart は、2007 年に自社サイトでの広告掲載を開始。2018 年には広告ビジネスを拡大し、動画広告や同社固有の「Buy Box Banner」といった多様な広告フォーマットを追加しました。2021 年にはグローバル広告事業だけで売り上げが 21 億ドルに達しました(英語)。
誤解その 2:広告の収益化は、それなりのトラフィックがある大企業向けのもの
もう 1 つのよくある誤解は、広告の収益化は Web サイトやアプリのトラフィックが多い有名ブランドでのみ有用で、小規模なブランドは収益化が見込めないというものです。
調査結果:実際には、収益化できるかどうかはトラフィック量だけで決まるわけではありません。収益計算は販売できる広告ユニットの数とその価格に基づいており、その他に広告フォーマットや配置、トラフィックなどの要素が最終的な収益額に影響します。これらに基づいて、広告の推定収益は簡単に試算でき、収益源としての価値を評価できます。
誤解その 3:広告収益化のためには多額の先行投資が必要
広告枠の収益化には大量のリソースや投資が必要だという印象を持っているため、広告収益化をためらっているブランドもあります。
調査結果:広告業界が成熟するにつれ、実用的なソリューションが登場し、ブランドが多額の先行投資をしなくても、広告収益化に踏み切れるようになっています。たとえば Google アド マネージャーや AdSense、AdMob などの広告ソリューションを使えば、ブランドは自社の Web サイトやアプリのプラットフォーム向けに広告を手軽に最適化し、少ない投資で収益を最大化できます。
広告の収益化は金銭的な利益以上のものを提供する
広告の収益化は、広告枠の販売で得られる金銭的な利益だけでなく、ユーザー体験の充実や広告主との関係構築、さらには新たな分野への投資と成長の機会を引き出すのにも役立ちます。
実際、広告が表示されるサイトやアプリの訪問者は、広告が優れたユーザー体験を提供してくれていると感じています。グローバルに展開しているあるクーポンサイトは、検索広告を導入して、訪問者の検索クエリと関連性の高い買い物情報を提供しました。こうしたユーザー体験の向上が、結果的には金銭的な利益にもつながっていきます。このクーポンサイトでは、2021 年のクリック率が前年比 2.7 倍に、広告収益は 6.1 倍に伸びました(*1)。
広告主にとっては、掲載した広告へのユーザーエンゲージメントが、顧客やビジネスを拡大する重要なチャネルになります。また、広告枠を提供するブランドにとっても、収益を損なわずにさらなるマーケティングの成長可能性をテストできるなど、ビジネスにとって良い効果を得られます。
広告収益化の始め方
広告収益化を成功させるには、スタートが肝心です。これから紹介するシンプルな 3 ステップのフレームワークは、広告ビジネスの成功に役立つでしょう。
1:ビジネス戦略に合わせた広告収益化プランを立てる
ビジネス全体の戦略において、広告収益化がどのような役割を担うのかを明確にしましょう。それが主要な収益源でなかったとしても、適切な指標で測定できれば、望ましい結果を得られるでしょう。
2:リソースを評価して最適な方法を選ぶ
広告事業を内製するかアウトソーシングするかは、社内のリソースや専門性、投資できる規模などを十分に確認して決めましょう。
3:テストと最適化により、最も良い方法を見つける
広告フォーマットの種類や配置など、継続的にテストを繰り返し、自社の広告事業に最適なものを見つけましょう。
このフレームワークの実践例として、アジア太平洋地域(APAC)のあるオンラインマーケットプレイスによる広告ビジネスの立ち上げ事例を紹介します。広告ビジネスを開始したこの企業は、サイト訪問者への意図しない影響を避けるために、まずは主要なページではなく、トラフィックの少ないページに試験的に広告を掲載することから始めました。
テストの結果、それまで採算が取れていなかったトラフィックの少ないページが広告収益化によって黒字化を達成しました。また広告フォーマットとその内容がサイトの内容に沿ったものだったため、ユーザー体験を損なうこともなく、かえって体験を充実させることもわかりました。
テストの成果を受け、この EC 企業では主要なページでの他社広告掲載も開始し、Google と協力して検索広告やショッピング広告などの広告フォーマットを試しました。その結果、ページのクリック率(CTR)は 3 倍以上になり、広告表示 1,000 回で得られる収益の見積額(eCPM)が倍増したのです。
さらにこの成果の実現には、大量のリソースは必要ありませんでした。Google のソリューションを使うことで、プログラム管理スタッフ 2 人と技術サポート担当 1 人だけで広告ビジネスを運営できたのです。
今こそ「鉄は熱いうちに打て」です。ビジネス全体の目標に合わせた広告収益化の戦略を取ることで、EC サイトやアプリのコンテンツを充実させ、より良い体験を提供し、さらなる企業の収益と成長のために、新たな分野を切り開きましょう。
他社の広告掲載を通じて、EC ビジネスの価値を最大限に引き出す方法の詳細はこちら(英語、要登録)で説明しています。